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1月の経常収支は予想通り大幅赤字。アベノミクスに徐々に変化の兆し

 

 財務省は2014年3月10日、2014年1月の国際収支を発表した。最終的な国の収支を示す経常収支は1兆5890億円の赤字となった。赤字額は前年同期比で5倍近くの水準で、比較可能な1985年以降では最大。季節調整済みの数値でも、5883億円の大幅赤字となった。

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 1月の経常収支が大幅な赤字になることは、すでに発表されている1月の貿易統計が2兆7900億円の赤字であったことからすでに予想されていた。このペースで経常赤字が続けば、通年での経常収支も赤字になることはほぼ間違いない。
 貿易赤字の拡大は、構造的な要因であり基本的には回避することは難しい。製造業の海外移転に加え、あらゆる業界で付加価値の低い製品の輸入切り替えが進んでいる。単純に輸出を強化するという場当たり的な対策ではなく、経常赤字を前提にした経済政策への切り替えが必要である。

 日本の経常赤字化は国内経済だけでなく、国際的な資金フローにも大きな変化を与える可能性がある。ここ20年の世界経済は、米国のバブル的好景気を背景に、米国が過剰消費を行うことで、成長を実現してきた。中国をはじめとする新興国の成長が著しかったのは、米国が膨大な貿易赤字を垂れ流しながら、モノを積極的に輸入していたからである。日本がリーマンショック直前に一時的に景気が回復したように見えたのも、米国への輸出が拡大したからである。

 だが米国と日本の状況は完全に逆転しつつある。米国はピーク時には毎月600億ドル(約6.2兆円)に上る貿易赤字を垂れ流していた。だが現在では、シェールガスによるエネルギー輸出の増加などによって貿易赤字が急激に縮小し、月あたりの赤字額は400億ドル(4兆1000億円)を切るようになっている。米国は資金流出を減らす一方で、日本は資金流出を増加させるという状況になっている。

 経常赤字化で注意する必要があるのは、赤字によって流出した資金と引き換えに海外から流入する資金をいかにスムーズに獲得するかという点である。

 米国は世界最大の金融大国であり、世界の投資家にとって最も魅力的な金融市場を持っている。このため、経常収支が赤字でも、米国にはそれを上回る資金の流入がある。だが日本は基本的に金融市場の開放に消極的であり、海外から良質な資金が流入する条件を整えていない。
 実際、日本の株式市場に流入する外国資本のほとんどはヘッジファンドなど短期的な投機資金であり、長期的な優良投資資金ではない。 

 経常収支の赤字と国内の貯蓄不足はほぼ表裏一体の関係にあり、不足した資金は海外からのファイナンスでカバーされる。このような状況で、いかに良質な海外資金を獲得するのかは、国内経済の安定にとって非常に重要なテーマとなる。
 現在のアベノミクスは輸出振興策が中心となっており、こうした議論が進んでいるとは言い難い。だが、政府の考え方も徐々にではあるが変わりつつある。10日の参院予算委員会で安倍首相は「経常収支の急速な変化を回避する観点からも強い経済は重要」と述べ、「経常収支の改善」から「急速な変化の回避」へ政策の軸足を移しつつあることをうかがわせた。

 なお、1月分の統計から、「所得収支」が「第一次所得収支」に、「経常移転収支」が「第二次所得収支」に変わったほか、算出方法の一部に変更が加えられている。

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