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伊吹議長の発言に首相周辺が不快感との報道に見る、マスコミと権力の複雑な癒着関係

 

 政府主催の「東日本大震災三周年追悼式」において、伊吹文明衆議院議長による脱原発の発言がネットでちょっとした議論になっている。
 きっかけは首相周辺から伊吹氏の発言に対して不快感が出ているという共同通信の報道である。脱原発について議論を尽くしたいとする伊吹氏の発言に対して不快というのはおかしいという意見が出る一方、原発を推進する立場の人からは、誰の発言か分からない報道であり、マスコミが意図的に安倍政権を貶めようとしているのだとする反論が聞かれる。

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 あまり知られていないが、新聞の書き方にはかなり厳密なルールがある。首相周辺といった場合には、一般的には首相秘書官のことを指す。政府高官といった場合には、官房長官や官房副長官のことを指している。
 今回の記事は誰が言ったのか分からないコメントを適当に報じたものではなく、首相秘書官が記者に語ったものである可能性が極めて高い。というより永田町の住人は皆、首相もしくは秘書官からの隠れたメッセージであると明確に理解している。

 立法府の長である衆院議長は、いわば首相と同格であり、しかも伊吹氏は議長就任に際して、表面的ではあるが会派を離脱している。本来であれば個人の良識にしたがってどのような発言でも許される立場である。
 その伊吹氏に対して不快感を示したというこの記事には、首相の立場や権威がいかに強いものであるかをアピールしたい首相サイドの意向が反映されている(もしくはそう振る舞いたい秘書官の意向)。党内に対しては、伊吹氏ですら批判されるのだから、他の議員はなおさらであるという萎縮効果がある。

 いずれにせよ、首相あるいは秘書官が、伊吹氏の発言を使って党内を牽制した可能性が高く、マスコミ側が安倍政権を貶めようとしているわけではない。新聞報道を表面的な目線だけで見てしまうと、事実関係を完全に見誤ってしまうのだ。

 大手マスコミは政権バッシングばかりしているようなイメージだが、現実はむしろ政権と癒着していることの方が多い。今回のケースのように政治部の記者が、永田町内部の伝言ゲーム的な権力闘争に一役買っていることは少なくないのだ。
 大手マスコミには、このような一部の人にしか分からない暗号文的な情報伝達の機能と、大衆向けの情報操作的な機能の両面が存在する。多くの人にとっては後者しか目に入らないが、実際には前者としての機能が政界・官界に果たす役割は極めて大きい。
 国民の新聞離れや影響力の低下が指摘されているにもかかわらず、永田町と霞が関が徹底して新聞を優遇しているのはそういった事情もある。

 大衆向けには大々的に政権を批判しつつ、永田町内部では、政権との密接な関係を維持する。大手マスコミのあり方に問題があるのだとすると、こうした部分こそがむしろ重要なのである。
 ネットの普及によって、ニュースの多様化が期待されながらも、思いのほか状況が改善しないのは、こうした事情を多くの人が知らず、表面的なマスコミ批判に終始してしまっている影響が大きい。権力とマスコミの関係はかなり根深いものなのである。

 - マスコミ, 政治 , ,

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