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ロシアによるクリミア編入宣言。その背景とアジア地域で想起される事態

 

 ロシアのプーチン大統領は2014年3月18日、クリミアをロシアに編入する条約に調印し、ロシア編入を正式に決定した。欧米との対立は決定的となったが、欧米側もクリミアの返還をロシアに強制するつもりはなく、これ以上、ロシアがウクライナに介入しないというところが双方の妥協点となりつつある。
 ただ軍事的圧力と住民投票さえあれば、容易に他国の地域を自国に編入できるという既成事実を作ってしまった影響は大きい。中国の膨張が懸念されるアジア太平洋地域において同じような事態が発生しないという保証はない。

putinrussia

 今回の一連の出来事では、軍事力を背景にしたロシアの動きが目立つが、俯瞰的に見ればロシアは基本的に防戦一方の立場である。
 ロシアのGDPは200兆円と日本の半分以下、米国の7分の1以下という水準で、かなり貧しい部類に入る。ロシア人男性の平均寿命は63歳と異常に短く、北朝鮮など最貧国並みである。

 軍事大国というイメージがあるが、実際には9兆円ほどしか軍事費はなく、日本よりは多いものの、中国の3分の2程度、米国と比較すると7分の1の水準にとどまっている。また、安価な新型揚陸艦をフランスから輸入するなど、ロシア軍の軍事技術の遅れは切実な状況といわれる。

 また国内に目立った産業がなく、外貨獲得手段は天然ガスしかないという状況であり、もしウクライナがEUに加盟してしまうと、ロシアの国際的地位は一気に低下する可能性があった。強引なクリミア編入は許されることではないが、ロシアが置かれた貧しく、厳しい状況を考えると、黒海への出口であるクリミア半島だけは死守したいというロシア側の意向は理解できなくもない。

 北朝鮮に代表されるように、相対的に貧しい国は経済制裁に強いという特徴がある。ロシアも同様であり、欧米先進国とは異なり、少々の経済制裁には耐えられる可能性がある。要するにロシアは弱者の論理、弱者の戦術を採用しているわけであり、逆に欧米各国が対応に苦慮する結果となっている。

 欧米各国は、これ以上、ロシアがウクライナに介入しなければ、クリミアのロシア編入を事実上、黙認する可能性が高い。そうなると、軍事的圧力から住民投票を経て他国への編入という既成事実が積み上がることになる。

 ここで、同様の事態の発生が想起されるのはアジア太平洋地域である。もっとはっきり言えば、中国による周辺国領土の併合ということになる。
 ロシアの事例を参考にするならば、こうした軍事力を背景にした強引な併合は、経済水準が高く、豊かになればなるほど、その損失が大きく、実施しずらいということになる。現在、米国は中国と包括的な経済・金融交渉を進めており、米国は中国の経済大国化、金融大国化を意図している。中国による強引な領土拡大を防ぐもっとも効果的な戦略は、現在、米国が意図しているように、中国を国際経済の表舞台に引っ張り出すことである。

 だがそれ以上に重要なことは、ウクライナは貧しいロシア以上に貧しい国であるという事実だ。日本と中国のGDPは2010年に逆転したが、その後の4年間で、すでに中国の経済規模は、日本の2倍近い水準にまで拡大している。中国の1人あたりのGDPはまだまだ小さいが、絶対的な規模ではすでに日本は中国の半分しかないという現実を忘れてはならない。
 日本が中国による脅威を払拭するには、高い経済成長を実現する以外に方法はないのである。

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