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「国営企業」ジャパンディスプレイの公募価格割れから考える、過剰な政府介入のリスク

 

 オールジャパンを掲げ、鳴り物入りでIPO(新規株式公開)したジャパンディスプレイが公開初日から大失速となっている。初値は769円と、公募価格を15%も下回る水準となった。政府系ファンドが株式のほとんどを所有する実質的な国営企業だが、市場はそう甘くなかったようである。

japandisplay

 ジャパンディスプレイは、日立製作所、東芝、ソニーの中小型液晶パネル事業を統合し2012年4月に発足した企業で、スマホやタブレット向けの製品を主に手がけている。
 この分野は韓国のサムスン電子と台湾企業の寡占状態となっており、規模の小さい事業を各社が個別に手がけている日本勢は不利な状況に置かれていた。
 本来であれば、各社がそれぞれの事業を売却するところだが、日本の場合は違った。政府系ファンドの産業革新機構が2000億円を出資し、各社を統合して再建に乗り出すことになったのである。
 統合後は、スマホ市場の急拡大という追い風に乗り、主に米アップル向けにパネル供給が急拡大、約2年で上場することになった。

 産業革新機構は今回のIPOで保有する株式の過半数を売却し2000億円の投資資金を回収することに成功している。継続保有分は約1000億円の価値があるので、最終的には、政府が1000億円儲けたという計算になる。
 産業革新機構の資金は税金なので、とりあえず国民の血税に穴があくという事態は避けられたが、オールジャパンというお題目に乗せられて新規公開株を買った投資家はすでに15%もの損失を抱えている。マクロ的に見れば、今回損失を抱えた投資家から政府に所得移転されたことと同じになる。
 今回株式を購入した投資家は、全員がすべての情報とリスクを考慮に入れた上で株式を購入したとは考えにくい。オールジャパンという宣伝文句を信用して購入したという人も少なくなかったと思われる。なぜか日本では、政府が関与した案件だけは、徹底した自己責任が求められる。

 今回の初値で公募価格を大きく下回ったということは、液晶パネルという価格勝負のビジネスに対して、市場は高い成長性を期待していなかったということになる。さらに言えば、日本は液晶パネルのように付加価値が低く、韓国企業と争うようなビジネスモデルを追求する国ではないと間接的に主張していると解釈することもできる。少なくとも、政府系ファンドが市場メカニズムとは関係ない力学で企業を救済したり、再建することのリスクをあらためて浮き彫りにしたといってよいだろう。

 今回、産業革新機構が再建と上場に成功したということは、民間のリスクマネーでも同じことが実現できたことを意味している。しかし、2012年当時、リスクを取ってこの案件を手がける企業や投資家はいなかった。その理由は定かではないが、経済合理性を考えて割に合わないと考えたか、日本経済が制度疲労を起こしており、もはやリスクのある投資家が登場する余地がなかったのかのどちらかである。

 仮に前者だとすると、産業革新機構の行動は過大なリスクを取ったということになり、国民の税金を運用するという観点で非常に問題である。一方後者だとすると、政府が実施すべきは、こうした企業の救済ではなく、民間が積極的にリスクを取ることができるための環境整備であるはずだ。政府が安易に出資をして再建の手伝いをしてしまうと、民間がさらに政府のお金に甘えるという事態になりかねない。

 液晶は基本的に価格勝負の製品であり、高い付加価値が得られる産業ではない。同じく液晶を主力とするシャープから見れば、価格競争を激化させる相手が国の支援で登場してきたことになる。また、同社は売上げの多くをアップルに依存しているという問題を抱えている。民間企業であれば、個別企業の戦略であり、何ら問題はないが、国民の税金が投入された国営企業となる話は別である。こういったところにも、政府のお金が介入することの難しさがある。

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