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まさに同床異夢。人民元変動幅の拡大で中国は元安、米国は元高を狙う

 

 人民元の対ドル・レートの下落が続いている。きっかけは、中国人民銀行が発表した、人民元の為替レート変動幅の拡大策。中国当局は景気対策を優先し、変動幅拡大を期に元安政策に舵を切ったわけだが、元高を求める米国との軋轢やインフレ問題など危うさもはらむ。

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 中国の中央銀行にあたる中国人民銀行は2014年3月15日、人民元のドルに対する為替レートの1日の変動幅を現在の1%から2%に拡大すると発表した。
 人民元の為替は現在のところ中国政府の管理下にあり、自由に取引することはできるものの、変動幅には1日あたりの制限が設けられている。これまでの制限幅はプラスマイナス1%だったが、3月17日の取引からはプラスマイナス2%まで拡大されている。

 中国が人民元の変動幅を拡大した背景には、人民元の自由化を求める米国の圧力がある。米国は中国政府が人民元を経済水準と比べて意図的に安く設定していると見なしており、その是正を求めている。これはかつてドイツマルクや日本円が不当に安い水準で固定されていると批判され、通貨高を要求されてきた経緯と同じである。実際、中国経済の規模はすでに日本の2倍近くになっており、人民元が高くなるのは妥当なことといってよいだろう。だが、当の中国政府はまったく逆のことを考えている。

 中国の狙いは変動幅の拡大を期に、短期的ではあるものの、元安方向に誘導することであると考えられる。中国は当初、経済規模の拡大に伴って人民元の価値が上がることは自然な流れと考えていた。通貨の価値が上がれば自国の輸出企業は不利になるが、かつての日本と同様、付加価値の高い産業にシフトすることで、克服可能と考えていたわけである。
 だが、最近の中国経済の失速で状況が変わってきた。長期的には人民元を上昇させるという方針に変わりはないものの、短期的には景気対策を優先し、構造改革の手綱を緩める方針に転じている。
 為替を安く誘導することで、輸出産業を刺激し、景気の下支えにしようという目論見である。元高は構造改革路線を意味しており、引き続き構造改革を求める米国と中国との間にすきま風が吹き始めたわけである。

 日本では円安政策にもかかわらず、思いのほか輸出が伸びないという事態に直面している。だが、国内生産が中心で、安価な労働力を使った基礎的な製造業が多い中国の場合、人民元を安く誘導できれば、現在、苦境に陥っている製造業をある程度回復させることが可能だろう。
 中国としては、人民元高を望む米国の要求に応えるフリをしながら、当面は人民元安に誘導していく腹づもりであり、実際、変動幅の拡大を発表して以降、人民元は下落を続けている。

 だが中国のこうした為替政策は諸刃の剣である。人民元安は輸入物価の上昇につながり、ただでさえ激しいインフレをさらに加速する可能性がある。また一定以上の元安は米国が許容しない可能性があり、そうなると現在進行中の米中間の包括的な経済・金融交渉の進展にも影響を与えることになる。中国は世界経済への貢献と自国経済の立て直しというジレンマの中で微妙な綱渡りを強いられている。

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