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思いのほか苦境にあるロシア。今回の一連の外交はいわゆる「弱者の戦略」

 

 ロシアによるクリミア併合プロセスが着々と進んでいる。表面的には軍事力を前面に押し出したロシアの派手な動きが目に付くため、国際政治の主導権がロシアに移っているかのように見える。
 だがもう少し俯瞰的に見てみると、ロシアは経済的にかなり追い詰められた状態にあり、今回の一連の動きはむしろ「弱者」だからこそ実現できた逆説的な戦略といってもよい。

putinkuremia

 旧ソ連時代は米国と並ぶ超大国だったロシアだが、現在の地位はかなり低下している。ロシアの2013年のGDPは約200兆円しかない。日本は約500兆円、中国は約900兆円、米国は1700兆円なので、ロシアの経済は先進国基準で見ればかなり貧しい部類に入る。ロシア人男性の平均寿命は63歳と異常に短く、北朝鮮など最貧国並みだ。

 またロシアは軍事大国というイメージがあるが、実際はそうでもない。2012年のロシアの軍事費は約9兆円である。5兆円しかない日本と比べれば多いが、すでに17兆円を投じている中国や68兆円に達する米国と比較すると、その規模の小ささが分かる。ロシアは金額ベースではもはや軍事大国ではない。
 ロシアは技術面での遅れも著しい。ロシアの艦船は燃料効率が先進国の3分の1といわれている。ロシアでは自国での艦船建造が限界となりつつあり、民間基準で設計されたフランスの安価な揚陸艦の輸入に踏み切っている。

 今回、ロシアがクリミア占拠に踏み切った背景には、このままウクライナの状態を放置すると、ロシア経済に致命的な影響が及ぶと考えたからである。
 ウクライナが現在の状況でEUに加盟すると、東欧と同様、ドイツやオランダへの安価な労働供給源となる可能性が高い。隣国であるウクライナがそのような状態になってしまうと、その影響がロシア経済にも波及してしまう。ロシア経済の一部がウクライナと同じようにEU経済圏に取り込まれるようなことになれば、プーチン政権の支配力にも影響が及ぶ。つまりウクライナはロシアにとって防波堤になっており、それが崩されようとしている状況なのだ。

 ロシアの切り札といわれる天然ガスも見方を変えればアキレス腱である。ロシアは天然ガスをドイツをはじめとする欧州各国に輸出しており、欧州の天然ガス需要の4分の1から3分の1がロシアに依存した状態にある。だが一方で天然ガスはロシアにとって外貨を稼ぐことができる数少ない産業のひとつでもある。ロシアが天然ガスの供給を停止すれば欧州経済は大打撃となるものの、ロシア経済も壊滅的な影響を受けてしまうという矛盾した状況にある。

 経済的にはウクライナはEUに取り込まれつつあり、ロシアはその代わりとして、地政学的に意味のクリミア半島を制圧した。だが経済的に苦しいロシアと比較してさらに貧しい状況にあるウクライナに対して、欧米各国が本気で救済するメリットは少ない。クリミア併合までであれば、強引なやり方が通用するだろうという読みがロシア側にはある。プーチン大統領はこのあたりの読みが絶妙なのだが、これは北朝鮮などが採用している、いわゆる「弱者」の論理を用いた恫喝外交ということになる。

 プーチン大統領はこうした状況をよく理解しており、クリミア併合の演説を行った際には、これ以上のウクライナ介入はしない方針を示唆している。ロシアがこの段階でとどまれば、欧米各国は事実上、ロシアの行動を黙認し、クリミア編入は既成事実になる可能性が高い。

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