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日本がとうとう核物質の米国返還を決定。日米関係は根本的に変わった

 

 日米両政府は2014年3月24日、核物質の最小化に関する日米の共同声明を発表した。核不拡散という観点から、日本は米国から研究用として提供されていた高濃縮ウランと分離プルトニウムを米国に返却する。米国が以前から返却を求めていたものだが、今回正式に返却するということに至った背景には、日本だけは特別扱いという従来の日米関係の変質がある。

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 米国は日本に対して研究用として高濃縮ウランと分離プルトニウムを提供していた。この核物質は、日本原子力研究開発機構の高速炉臨界実験装置(FCA)において、高速増殖炉「もんじゅ」開発のための基礎データ収集などに使用されていた(写真)。

 日本は原子力発電所の使用済み燃料を再処理し、その中からプルトニウムを抽出して核燃料として再利用する「核燃料サイクル」の構築を目指してきた。
 ウランやプルトニウムは原子力発電所の燃料として用いられるが、これらは核兵器に転用することも可能である。米国がプルトニウムを他国に提供することは、研究用とはいえ、そうたやすいことではない。プルトニウムは4キロから6キロあれば核兵器が1発製造可能といわれている。米国から提供を受けた核物質は約300キロなので、核兵器50発から75発分というこになる。
 日本がこれだけの量の核物質の提供を受けることができたのは、日米両国が、日米安全保障条約という軍事同盟で結ばれた強固な同盟国であったという事実が大きく影響している。

 日本と米国との間には、日米原子力協定が結ばれており、米国は日本が核燃料を再処理してプルトニウムを取り出すことを認めている。しかし米国はすべての同盟国に同じような条件を認めているわけではない。
 米国が韓国と結んだ原子力協定では、韓国が独自に核燃料の再処理をすることを禁止している。少なくともこれまでは日本の立場は米国にとって特別なものだったと考えてよいだろう。またこうした関係が成立していることで、日本は核兵器を保有していないにも関わらず、国際社会では準核保有国として高い地位を確保してきた。

 今回オバマ政権が核物質の返還を迫ったのは、イランや中国に対して、ダブルスタンダードが許容されなくなってきたからである。
 オバマ政権は2013年11月、核問題についてイランと歴史的合意に達したが、イランはかねてから日本には核物質の保有を許容し、イランには認めないというダブルスタンダードを批判していた。また中国も、日本が核物質を保有していることは、核兵器製造の意図の表れだとして批判していた。オバマ政権はイランとの合意や中国との交渉を優先し、日本に核物質の返還を求めることを決定した。

 以前の日米関係であれば、イランや中国からの圧力で日本に核物質の返還を求めることなど考えられなかったが、国際情勢は大きく変化した。これは日米安保体制の変質と見ることもできるし、日本の国際的な地位の低下と見ることもできる。いずれにせよ、いわゆる戦後的な価値観がもはや通用しなくなってきたのは事実である。

 日本では高速増殖炉もんじゅの深刻なトラブルで核燃料サイクルの構築が事実上ストップしている。日本は、各地の原子力発電所の使用済み燃料から抽出されたプルトニウムを使い道のないまま保持し続けている。その総量は44トンにも達し、これは核兵器数千発分に相当する。
 下手をすると、今回の核物質返還をきっかけに、保有するプルトニウムの破棄といった、次の段階に話が進展してくる可能性もある。

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