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小保方氏を茶化した朝日新聞デジタルのコラム削除問題は、日本ならでは

 

 理化学研究所の小保方晴子氏が歌手デビューするという、「嘘」を題材にした朝日新聞デジタルのコラムが物議を醸している。朝日新聞デジタルは、おわびを掲載してコラムを誌面から削除した。

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 問題となったのは、有名人の架空の悩みを勝手に考え、勝手に回答するという、今井舞氏の「ウソうだん室」というコラム。
 内容は、研究者としてはどこも雇ってくれないので、「AKB48」が現在募集している30歳以上の新メンバー「大人AKB」企画に応募しようという気になったというもの。「デビュー曲は『人生切り貼りしちゃえるNO!』」にしたいと茶化している。
 このコラムに対しては、ネットを中心に批判が殺到、朝日新聞デジタルは記事を削除し、お詫び文を掲載するという事態になった。
 一連の出来事は日本のメディア環境の特殊性を顕著に示していて非常に興味深い。

 このコラムの内容の是非はともかく、一定の批評的なスタンスで有名人を面白おかしく茶化すというコラムは、かなり以前から存在しており、特に目新しいものではない。一定の読書経験のある人なら誰でも読んだことがあるものだろう。
 だがこういったコラムは、主に週刊誌や月刊誌など、新聞に比べてマイナーな媒体で提供されてきた。著者の今井氏も、サイゾーなど少々毒のある、ニッチな媒体を主な活動場所としている。

 一方、日本の新聞は各紙が数百万部という世界でも類を見ない部数を持つ巨大媒体である。テレビと同様、完全にマスを対象読者としている。
 新聞もビジネスであることを考えれば、マーケティング的にはファストフードやコンビニなど、大衆向け産業とまったく同じことになる。マス向けビジネスの世界では鉄則なのだが、毒気のあるシャレやブラックジョークはすべてタブーである。テレビ局が、どれも同じようなバラエティ番組やグルメ番組ばかり流しているのには意味があるのだ。
 今回はデジタル版だが、基本的には紙の朝日新聞と同じ方向性を持つ媒体と考えてよい。その点からすると、このコラムを掲載することは、当初からムリがあったということになる。

 インターネットは低コストで情報を発信することができるツールであり、本来であれば、紙のように媒体が寡占化することはあり得ないと考えられてきた。だが、共同体社会の仕組みが色濃く残る日本の場合には、自由なインターネットが登場しても、大手マスメディアが情報を独占している状況に変化がなかった。それは情報の受け手が、寡占化された情報源を求めているからにほかならない。

 日本ではマスゴミという言葉に代表されるように、マスメディアに対する批判が激しい。だがこれは大手マスメディアに対する関心が異様に高いことの裏返しでもある。新聞を信頼できると考える人が25%程度しかおらず、新聞記事に国民がそれほど高い関心を払わない米国とは大違いである。

 つまり日本国民は大手マスコミが大好きなのであり、このような社会環境が、数百万部という世界でも例を見ない巨大媒体を作り上げる土台となっている。こうした状況において、毒気のあるコラムを掲載すれば、今回のような結果になることは火を見るより明らかであった。
 本来であればニッチ媒体で提供され、清濁併せて楽しめる人だけが読むコンテンツが、巨大媒体に流れてしまっている。これは情報の受け手と出し手の双方が大きく偏っている日本ならではのトラブルといってよいだろう。

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