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様変わりする台湾の民主化運動。背景には中国の台頭と米国政治の変質がある

 

 台湾で中国との経済協定に反対する学生が立法院(国会)を占拠している問題は、いまだに解決の糸口が見えていない。
 台湾の中国化に対する危機感が抗議行動の背景だが、台湾独立が現実的であった2000年代前半と比べると、状況は様変わりしている。中国の地位は圧倒的になり、米国も台湾独立はもはや視野に入れていない。香港と同様、中国の存在を大前提にした民主化運動という位置付けになりつつある。

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 学生の抗議行動のきっかけとなったのは、台湾政府が2013年に中国と調印したサービス貿易協定。密室で決められた協定であり、台湾の中小企業への打撃が大きいとして野党の民進党などが激しく反発している。
 学生はこの協定問題をきっかけに3月17日から国会に相当する立法院の占拠を続けている。ただ、サービス貿易協定はあくまできっかけであり、その背後には、台湾の中国化という大きな問題が横たわっている。

 台湾(中華民国)は、中国共産党との内戦に敗れ、現在の場所に逃れて以降、中国と敵対してきた。当初、米国や日本は台湾を正式な国家とみなしていたが、中国の台頭によって状況が変化、1979年に米国は中国と正式に国交を結んだ。
 だが米国は中国への牽制という意味から、台湾への支援も続けており、米国内での台湾支持派は「チャイナロビー」といわれ絶大な政治力を維持してきた。

 だがここ10年で中国がさらに躍進し世界的大国になったことで、米国内の状況が変化してきた。最近では台湾への支援を停止すべきとの声も公然と上がるようになってきている。
 また台湾人の意識もかなり変わってきた。中国が途上国だった時代には台湾の方が圧倒的な経済力を持っており、1990年代の後半から2000年代の前半にかけては独立運動が最高潮となっていた。だが台湾と中国の経済的な立場は完全に逆転し、中国側の切り崩し工作によって、独立運動はかなり下火になってきている。

 中国は台湾の中国寄りの実業家に手厚い保護を本土で与え、台湾経済の中国化を進めてきた。台湾企業でありながら、中国本土をベースに世界的企業にのし上がり、iPhoneの製造を一手に引き受けるようになった鴻海(ホンハイ)精密工業はその典型である。

 現在の学生らによる抗議活動はいわゆる独立運動ではなく、圧倒的な経済力を持つ中国の存在を前提にした民主化運動ということになる。
 一方、中国も、軍事力を背景にした台湾の強引な併合は現実的シナリオではなくなっている。経済的な統合を深め、実質的に台湾を取り込んでいく戦略を進めていく可能性が高い。

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