欧州中央銀行がとうとう量的緩和を示唆。一気にドル高が進む?
ECB(欧州中央銀行)がとうとう量的緩和の実施に踏み切る可能性が出てきた。2014年4月3日、ECBのドラギ総裁は、低いインフレ率が続く場合には、非標準的な金融政策を実施する可能性があると発言した。非標準的な金融政策とは量的緩和策のことを指す。
欧州では景気の最悪期は脱したが、インフレ率の低迷や失業率の停滞に悩まされている。
一方、米国はすでに量的緩和縮小を開始しており、今後の金利上昇が視野に入り始めている。日本に続いて欧州が量的緩和を実施することになると、ドル高傾向がさらに顕著になる可能性がある。
ECBが発表した2014年のインフレ率見通しは1.0%とかなり低め。もともと経済が好調なドイツは、成長率に鈍化が見られるものの、依然として良好な状態を保っている。また英国はほぼ景気回復のフェーズに入り始めている。
一方、停滞が続くのがもう一方の大国フランスである。フランスの2014年の実質経済成長率見通しはわずかにプラス0.2%、2月の失業率は10.4%と改善する気配はない。経済危機となったスペインの失業率は25%台でこちらも目立った改善が見られない状況だ。
好調なドイツと英国も、結局はEUのインフラを活用できているからこそ実現できる果実であり、欧州全体としてみれば低迷が続いていることになる。
ECBはこれまで低金利政策を続けることで、何とか事態に対処してきたが、その政策もそろそろ限界に達しつつある。実際に量的緩和を実施するのかはまだ不透明だが、欧州の低インフレが長引きそうなことは、完全なコンセンサスになった。
もしECBが量的緩和に踏み切ることになると、日本に引き続いて欧州もマネーを大量供給する政策に舵を切ることになる。中国も景気の失速が顕著になってきており、一時的とはいえ元安誘導を行っている。世界経済の中において、米国だけが突出して好調であり、米国とそれ以外の地域のスタンスが正反対という状況になってしまう。
米国のGDPは約1700兆円あるが、EU全体ではやはり1700兆円程度の規模があり、中国は約900兆円である。いくら米国が好調といっても、EUと中国が足を引っ張る形になると、いずれ米国の景気にも影響が出てくる可能性がある。いずれにせよ、しばらく膠着していた為替相場が、そろそろ本格的に動き出すことになるかもしれない。
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