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公的年金はアクティブ運用へ。だが肝心の運用手法については疑問の声も

 

 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、本格的な運用の外部委託を開始するという報道が話題となっている。
 資産運用会社の活用は既定路線なのだが、注目されたのはその中身である。自己資本利益率(ROE)に着目したアクティブ運用を行うという方針に関して、これで本当にGPIFのパフォーマンスが向上するのかという疑問の声が上がっているのだ。

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 年金の運用改革については2013年11月に、国債を中心とした従来型ポートフォリオの見直しを求める有識者会議の報告書が出ている。安倍首相は2014年2月24日の衆院予算委員会で、公的年金の運用方針を見直す考えを明らかにしており、今回の措置はこの考え方に沿ったものである。

 日経新聞の報道によるとGPIFは、高収益の日本株を組み込んだファンドへの投資を開始する方針だという。具体的にはゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントなど数社に運用を委託する。委託規模は1社あたり2000億円から4000億円程度。市場平均を上回る「アクティブ運用」が中心となる。

 だがこのアクティブ運用については、本当に年金のパフォーマンス向上につながるのか疑問の声がある。その理由は、今回、委託されるファンドがROE(自己資本利益率)に着目しているからである。

 ROEが高いということは、自己資本を有効活用し、高い収益を上げていることの証明となる。一般論として、こうした企業の株価は高い。だがROEが高い企業への投資については2つの問題がある。
 ひとつは高いROEの会社にばかり投資してしまうと、今後の伸びしろが少なく、結果的に低いパフォーマンスにしかならない可能性があるという点。もうひとつは、高いROEの会社に投資するのであれば、すでに東証が、株価指数「JPX日経インデックス400」の算出を開始しており、高い手数料を払って外部のファンドに依頼する必要が薄れているという点である。

 伸びしろがない点については投資戦略の問題であるので、それほど重要ではないかもしれない。しかし、年金という公的資金を扱う機関としては、手数料の問題は非常に重要となる。
 高いROEの会社だけを集めたJPX日経インデックスのポートフォリオと、今回外部委託されるファンドのポートフォリオが劇的に異なっているとは考えにくい。もしそうだとすると、同じ銘柄を買うために、わざわざ高い運用手数料を外部のファンドに支払うことになる。

 こうした状況を国民に納得させるためには、委託するファンドのポートフォリオとJPX日経のポートフォリオがどれほど異なっていて、それがどれだけの収益の違いにつながるのか、GPIFは丁寧に説明する必要があるだろう。
 もともと運用の外部委託については、莫大な手数料収入をめぐって政治利権化しているとの指摘もあった。こうした部分がおざなりになってしまえば、国民の大事な資金を、手数料の高い投資会社に委託しただけという印象を残しかねない。

 また本当にリスクをとってアクティブ運用をしなければならないのかについても議論の余地がある。現在、GPIFの資産は120兆円ほどあるが、年金の徴収よりも給付の方が大きく、運用資金が毎年3兆円から4兆円ずつ減少している。この穴を埋めなければならないという理由でアクティブ運用へシフトするというのであれば、それこそ本末転倒になってしまう可能性がある。

 - 政治, 経済 ,

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