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経常赤字体質への転換を受け、政府は海外資本の誘致に舵を切り始めた

 

 財務省は2014年4月8日、2014年2月の国際収支を発表した。最終的な国の収支を示す経常収支は6127億円の黒字となった。前月は1兆5890億円の大赤字だったが、今月は一転して黒字に転換した。
 貿易収支が大幅に改善したことが原因だが、前月の大赤字は特殊要因といわれており、今月はその反動という意味合いが強い。季節調整済みの数値では、経常収支は414億円の赤字となっており、経常収支が赤字になりつつあるというトレンドが変わったわけではない。

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  政府は当初、輸出を強化し、経常収支を改善させるというスタンスだった。しかし、赤字体質の恒常化を受け、徐々に現実的な政策に軸足を移しつつある。
 経常赤字になるということは、海外からのファイナンスへの依存度が高まることを意味しているが、そのような環境においては、良質な海外資本の誘致が重要な課題となる。
 政府は、海外からの直接投資を一気に倍増させる計画で、経済財政諮問会議などにおいて具体策の検討がすでに始まっている。

 現在、日本が受け入れている海外からの直接投資残高は約17兆円で、日本が海外に対して行っている直接投資の残高(約90兆円)と比較して大幅に少ない。政府はこれを2020年までに35兆円程度まで倍増させる目標を掲げた。

 一見矛盾するようだが、海外からの直接投資の積極的な受け入れは、経常収支に対してもよい影響を与える。経常赤字の影響を緩和するためには、海外への投資をさらに積極的に行い、投資から得られる利子や配当を増やすことがもっとも現実的である。具体的には海外M&Aの促進である。

 実は、海外への直接投資と海外からの直接投資受け入れには密接な関係がある。国内への受け入れが活発な国ほど海外への投資も活発になるという傾向が顕著なのである。例えばドイツは、外国に対して1兆5400億ドルを投資しているが、自国も1兆ドルを受け入れている。英国や米国も同様だ。
 海外からの資金を積極的に受け入れれば、国内の競争も活性化する。結果として質の高い海外M&Aが可能となり、海外に対する利子配当の支払いを差し引いても、経常収支にはプラスとなる。これは経済の質が高い先進国にしか実現できない戦略である。

 ただ少々気になるのは、政府が直接投資の誘致に際して、総理・閣僚によるトップセールスなど、外交による実現を強調している点である。
 資本の動きは完全に市場原理に基づいており、魅力的な市場には黙っていても資金が集まってくる。日本に海外からの優良資本が入ってこないのは、日本市場が不透明でフェアではないと思われているからであり、この状況を改善しない限り、どんなにトップセールスをしたとしても、優良資本が入ってくる可能性は低い。むしろ、外交に頼りすぎると、政治的思惑を持った優良ではない資本が入ってくるリスクが高まってくる。

 海外からの資本誘致は大変結構なことだが、そのやり方は、透明性を高め、魅力的な市場にするという、資本主義の王道を行くべきである。

 - 政治, 経済 , ,

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