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再処理施設の稼働に米国が懸念?核物質蓄積には何らかの説明が必要

 

 青森県六ヶ所村の核燃料再処理施設の稼働開始を控え、米国が日本に対してプルトニウムの増加について懸念を伝えているという報道が出ている。

 rokkasho01 報道したのは、米国の非営利調査報道機関「センター・フォー・パブリック・インテグリティー」と朝日新聞。両者の共同取材によると、現状で再処理施設を稼働させれば、核兵器に転用できるプルトニウムが増えるばかりで核不拡散に逆行するという観点から、米国が再処理施設の稼働に懸念を伝えてきているというもの。

 米国は日本に対して再処理施設の稼働について何らかの見解を表明しているわけではなく、記事は関係者の証言をもとにした内容となっている。
 したがって、現時点において、オバマ政権が日本の核燃料サイクルについて懸念を持っていると断言することはできない。
 政府は2014年4月11日、エネルギー基本計画を閣議決定し、原発の再稼働を正式決定した。また核燃料サイクルの開発を従来通り進める方針も明確にしている。ただ、日本が従来とまったく同様の条件で核燃料サイクルの構築を進めることができるのかについて、国際的に微妙な状況となっているのは事実である。

 日本政府は2014年3月24日、米国から研究用として提供されていた高濃縮ウランと分離プルトニウムを米国の求めに応じて返却すると発表している。核不拡散という観点から核兵器に転用が可能な物質は放棄するということだが、これは従来の米国の核不拡散政策の転換を意味している。

 米国は基本的に米、英、仏、露、中の5カ国以外が核兵器を保有することを禁じる、核不拡散政策を推進してきた。日本は核兵器を保有できない国になっているわけだが、日本だけは事実上の例外扱いとなっていた。
 日本と米国の間には、日米原子力協定が結ばれており、米国が認めれば、日本は独自に核燃料の再処理を実施し、プルトニウムを抽出することができる。平和目的とはいえ、プルトニウムを独自に抽出できるということは、実質的な核保有と同じ意味になる。このため日本は非核国でありながら、実質的な核保有国とみなされてきた。この条約は、日本にだけ特別に適用されてきたものである。

 だがオバマ大統領は、米国が研究用として提供した高濃度プルトニウムを、米国に返還することを求めてきた。少なくとも、日本に対する核不拡散政策が、従来とまったく同じではないことが明らかになったわけである。一部の関係者からは、六ヶ所村の再処理施設についても、何らかの言及があるのではないかという声も出ていた。

 六ケ所村の再処理施設は、年間800トンの使用済み核燃料(厳密には800トン・ウラン)を再処理し、約8トンのプルトニウム(このうち、核分裂性のものは5トン)を取り出す能力がある。日本にはすでに、各地の原子力発電所の使用済み燃料から抽出したプルトニウムを44トン保有しており(現在は再処理を英国とフランスに委託している)、これは核兵器数千発分に相当する。六ヶ所村の施設がフル稼働すれば、2~3年で核兵器1万発分の量に達してしまう計算だ。

 核燃料サイクルは、その中心となる高速増殖炉「もんじゅ」がトラブルで停止しており、現在は既存の軽水炉でプルトニウムを燃やすプルサーマルしかプルトニウムを消費する方法がない。プルサーマルでは原発1基あたり年間0.3トン程度しかプルトニウムを消費できず、しかもこの計画は各地の反対運動で予定通りに進んでいない。

 六ヶ所村の施設が本格的に稼働すれば、米国からの懸念の有無にかかわらず、プルトニウムを保有量が増加するのは間違いない。これについて、日本としてどう取り組むのか、対外的に明確な説明が必要であることは間違いないだろう。

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