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新しい増資手段ライツイシューに規制?制度を生かすも殺すも、最後は投資家次第

 

 既存の株主に対して新株購入の権利を割り当てる「ライツイシュー」の審査が厳格化される可能性が高まってきた。赤字企業がこれを乱発するケースが続き、投資家から不満の声が続出。日経新聞の報道によると、東京証券取引所は近く事前審査制度を導入する見通しだという。

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 ライツイシューは、2009年から導入が進められた制度で、増資をしたい企業は、既存株主に対して新株を購入する権利を無償で提供するというもの。株主は増資に応じるか、権利を市場で売却するのかを選択することができる。
 ライツイシューというと何やら目新しい響きがあるが、何のことはない、昔はごく一般的に行われていた株主割当増資の変形版である。日本では1960年代までは、増資といえば既存の株主から増資を募る株主割当増資が主流だった。
 株主割当増資は、現在主流となっている第三者割当増資と比べて、既存株主の権利が保護されやすいという特徴がある。その会社に以前から投資していた既存株主に、最初に株を引き受ける権利が与えられるという考え方は、株式会社の基本的理念からすれば非常に合理的である。

 ただ、これはあくまで、株式引き受けの優先権があるということに過ぎず、何らかの直接的な利益が得られるわけではない。市場より安い価格でライツイシューを実施し、その後、株価が元に戻れば結果的に株を引き受けた投資家が儲かることはあるだろう。だが、あくまで増資であることに変わりはなく、1株あたりの利益は減少することになる。理論的には、増資分だけ株価は下落することになるので、プラスマイナスはあくまでゼロである。

 この問題は、ライツイシューという目新しい名前によって、一部の投資家が、非常に有利な手段だと誤解している点にある。第三者割当増資すらままならなかった企業が、最後の手段として、知識のない既存株主に対して、あたかも得するかのようなイメージで増資を実施するというやり方である。東証はおそらくこのあたりを問題視しているのだと考えられる。

 だが本来は、こうした馬鹿げた増資については投資家がノーを突きつける、つまり増資が成立しないという形でブレーキをかけるのが本来の株式市場の姿だ。取引所が規制をかければ、一時的にはこうした行為は減るかもしれないが、再び形を変えた増資スキームが登場してくるだろう。

 存続が危ぶまれる会社が、破格の値段で株主割当増資を行うことの意味をよく理解できないという投資家は、やはり株式投資の基本的な知識が不足していると言わざるを得ない。
 結局、どんな制度を導入しても、投資家側が高い意識を持っていなければ、すべては企業側に有利になってしまうのがこの世界の現実なのである。

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