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タイのインラック首相がとうとう失職。7月の総選挙に向けて混迷の度合いが深まる

 

 タイの政局がますます混迷の度合いを深めてきた。タイの憲法裁判所はインラック首相が行った人事について憲法違反との判断を下し、首相と9人の閣僚が失職する事態となった。副首相のタムロン氏が暫定的に首相に就任するが、7月には総選挙が行われる見通しだ。

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 憲法裁判所が違憲と判断したのは、2011年にインラック首相が行った人事。
 首相が親族を国家警察本部の長官に就任させるために、国家安全保会議の事務局長を異動させたというもの。裁判所はこれが不当な人事介入にあたると判断した。

 この判決は首相の職権乱用というよりも、権力闘争という側面が強い。
 タイでは、インラック首相の兄で、現在国外亡命中のタクシン元首相派と、官僚や軍を中心とする反タクシン派の権力闘争が長年続いており、憲法裁判所は反タクシン派の影響を強く受けているといわれているからである。

 タイの政治は日本と同じく、官僚が主導権を握っている。警察官を辞職して実業家となったタクシン氏は、莫大な資金を背景に首相に就任した。タクシン氏は、地方や低所得者に対するバラマキ政治を行う一方、外国に対しては市場を大胆に開放するなど、いわゆる構造改革路線を進めてきた。
 このため、地方の農家や低所得者層、それに一部の実業家などからは絶大な支持を得る一方、既得権益を持つ官僚や大企業からは猛反発を受けた。その結果、地方と外資を重視するタクシン派と、官僚と大企業を重視する反タクシン派で激しい政治的対立が続くことになった。

 結局タクシン氏は、事実上のクーデーターで政権を追われ、現在、国外に居住している。タクシン氏の後を引き継いで首相に就任した妹のインラック氏は、タクシン氏が帰国できるよう恩赦法案を整備しようとしたが、強い反対を受けて断念している。
 官庁に強力な政治基盤を持たないタクシン派としては、タクシン氏の出身母体である警察は何としても掌握したいところである。それが、幹部人事への介入につながったと考えられる。

  今回、インラック首相が失職したことで、タクシン派はリーダーを失った状態にある。7月の総選挙がどのような結果になるのは、現時点ではまったく不透明である。少なくとも選挙に向けて、反タクシン派のデモ活動などが活発になるのは間違いない。

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