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過去最高益。業績絶好調のトヨタが抱える、将来への深い悩み

 

 トヨタ自動車は2014年5月8日、2014年3月期の決算を発表した。本業のもうけを示す営業利益がリーマンショック前を上回り、過去最高となった。まったく申し分のない決算内容だが、同社は今期の業績見通しや、今後の利益成長について慎重な姿勢を崩していない。

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 同社の売上高は25兆6919億円、営業利益は2兆2921億円、当期利益は1兆8231億円だった。売上高は前年比で16.4%の増加、、当期利益は約90%の増加である。

 主力の国内市場と北米市場で販売が好調だったことや、為替が円安に振れたこと、部品の共通化など原価率の低減を進めたことなどが総合的に寄与した。本来はさらに利益が2000億円程度プラスされるはずだったが、北米でのリコールに対する制裁金などが響き、今回の水準に落ち着いた。

 決算内容としては申し分ないが、決算発表に臨んだ同社の豊田章男社長は終始慎重なスタンスを崩さなかった。同社の今期の業績見通しは、売上高2兆5700億円、当期利益は1兆7800億円と、ほぼ横ばいとしている。豊田社長は「1000万台のトヨタと600万台のトヨタでは成長の意味が全く異なる」と述べており、同社が従来とはまったく異なる次元に入ったことを強調している。

 確かに同社は、現在の環境において完全に最適化されており、これ以上、利益体質にすることは現実的に難しい。今期大幅増益になったのは、原価率の低下と為替の影響が大きいのだが、為替といっても、輸出による売上げが増えたので儲かったという程、話は単純ではないのだ。

 同社の国内生産と海外生産の比率は1対1となっている。一方、国内販売と海外販売の比率は1対3になっており、海外販売比率の方が高い。国内生産と海外生産に差分があるため、この分については、為替の恩恵を大きく受ける。特に好調な北米市場やアジア以外の新興国市場分は日本からの輸出の割合が高く、これが営業利益増加に貢献した。

 こうした絶妙な仕組みを、トヨタほどの規模で構築するのは容易なことではない。各国の政治的な意向にも大きく左右されるため、現地生産、現地販売も同時に進めていく必要があるからだ。グローバルな生産と販売の組み合わせの中で、為替の恩恵を最大限受けられるよう、オペレーションを最適化しているわけである。

 その意味で、現在のトヨタでできることはほぼすべてやり尽くしてしまった感がある。今期については大幅な円安は望めないので、販売台数が伸びない限り、利益成長を実現することは難しいだろう。
 次の成長フェーズに入るためには、従来とは全く異なる戦略が必要になるが、その部分について同社は具体策を明らかにしていない。絶好調な決算であるが故に、将来の利益成長について深い悩みを抱えてしまったという、皮肉な状況といえる。

 - 経済

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