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柳井社長が前言撤回?息子が役員に就任したユニクロはホンダの二の舞になるのか?

 

 ユニクロを展開するファーストテイリリングは2日、柳井正会長兼社長の長男で、子会社リンク・セオリー・ジャパン会長の柳井一海氏がグループ執行役員に就任したと発表した。
 一海氏は、ボストン大学大学院でMBA(経営学修士)を取得した後に、投資銀行大手のゴールドマン・サックスに入社。投資銀行部門を経て、リンク社に入社していた。

 柳井会長はかねてから「後継者の世襲は絶対にない」と宣言してきた。だが、一海氏が執行役員に就任したことで、前言撤回なのではという声も上がっている。一方、企業統治をよく知る専門家の中には、さらに別な事態を懸念する向きもある。

 本来、企業統治の理念を考えれば、会社を所有する大株主が経営に関与するのは自然な姿である。大株主の一人である一海氏が会長などに就任して全社を指揮するのは、むしろ自然な成り行きといってよい。一海氏が経営に失敗すれば、自身が何百億円、何千億円もの損失を出すのである。サラリーマン社長の息子がコネで入社するのとは事情が大きく異なる。

 だが、柳井氏はあえてそれを否定してきた。はっきりとした理由は明らかではないが、それは、社会の批判を考慮してのことかもしれない。
 日本社会では、サラリーマン経営者がコネで息子を入社させることと(例えば大手自動車メーカー社長の息子がコネで大手広告代理店に入社するといったケース)、たとえ息子といえども数百億円の出資をしリスクを取った上で経営に参画することの区別があまりついていない。場合によっては、ひとくくりで世襲やコネといって批判されてしまう可能性がある。

 だが批判を恐れ、こうした回りくどいやり方を選択すると、これが大きな悲劇を招くこともある。ホンダその典型的な前例といえる。

 ホンダ創業者の本田宗一郎氏は、柳井氏と同様、常々世襲はしないと公言してきた。実際、息子の博俊氏はホンダに入社はしなかったが、ホンダにレーシングエンジンを提供する株式会社「無限」を設立し、社長に就任した。別会社とはいえ、ホンダがエンジンを買わなければ会社は運営できるわけもなく、同社は事実上ホンダのグループ会社であった。
 なぜそうなったのか。世襲はしないと公言したものの、ホンネでは息子の行く末を心配している本田宗一郎の心情を「配慮」し、周囲の人間がそう仕向けたのである。

 悲劇はそこで起きた。ホンダから出向していた社員が博俊氏の名前を使い、数十億円の不正流用、脱税事件を起こした。いくら部下が犯罪を主導したとはいえ、ハンコをついた社長が「知りませんでした」などという言い訳ができるわけもなく、博俊氏は逮捕され、刑務所に収監されてしまった。

 博俊氏が、正々堂々、ホンダの大株主として経営に参画していれば、このような事態にはならなかっただろう。創業者一族がどう考えようと、周囲にはそれを利用して甘い汁を吸おうとするコバンザメ社員が群がってくる。ホンダから出向した社員は、常々「博俊氏はこう言っている」が口癖で、博俊氏の権威を振りかざし、ホンダから大量の資金援助を引き出していたという。

 柳井氏の次男、康治氏も9月にファストリに入社しているが、もし柳井氏が引退もしくは死去して会社から去ることになれば、皆が「一海氏はこう言っている」「康治氏はああ言っている」といって、社内で吹聴するようになるだろう。

 一海氏と康治氏が会社とはまったく縁のない人生を送るのであれば話は別だが、どんな形であれ会社に入社してしまえば、社内政治から無縁でいることは不可能である。両氏にはなるだけ早いうちから、正式に経営に参画させた方がよい。少なくとも同社に投資する投資家はそう考えるはずだ。

 - 経済

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