中国向けの輸出が失速し北米と再逆転。だが事態はもっと深刻である!
日本の輸出先としての中国の存在感が低下している。
財務省が発表した2012年度上半期(4月~9月)の貿易統計では、輸出金額で北米市場が中国を抜いて再び首位になった。中国向けの輸出は5兆9200億円だったのに対して、北米向けは5兆9800億円だった。通期での輸出動向は、これまで一貫して北米が首位だったが、2008年に中国が北米を抜いて、日本最大の輸出先となっていた。
中国向けの輸出が減ったのは、中国の景気減速が主な要因。尖閣問題の影響はこれから数字に反映されてくることから、今後さらに減少することが見込まれる。
中国市場に対してはこれまでバラ色の予測がまかり通ってきたが、今回、それがあくまで幻想であったことが数字となって現れた格好だ。
日本では中国は巨大な消費市場が存在すると喧伝されてきた。それは事実ではあるのだが、日本企業にとっては事実ではなかった。
日本が中国向けの輸出を伸ばしてきたのは、あくまで工作機器や部品などの中間財が中心。エンドユーザー向けの商品ではない。
これはどういうことかというと、日本製品の最終的な消費地は中国ではなく、いまだに北米や欧州であるということ。つまり工場を中国に移転したことにより、日本メーカーは中国に部品を輸出し、組み立てられた最終製品が北米や欧州に向かうのである。
中国は豊かになったとはいえ、内陸部の所得はまだ低い。先進国の中間層が購入する商品をバンバン購入できる水準にはない。今、中国向けの輸出が減少しているのは、欧州不安などから中国が設備投資を控えたことで、日本に対する機器類や部品の発注が減少したことが原因と考えられる。
もっとも中国が最終消費地として魅力的ではないといっているのではない。最終消費地としての中国はこれから開拓される市場なのである。日本は米国企業や欧州企業、韓国企業に比べて、最終消費地としての中国進出が相当出遅れている。事態はさらに深刻なのだ。
今後、中国国民の所得が向上し、先進国と同様の購買力を持ったときに、日本企業は大きく引き離されている可能性が高い。
これから日本では中国向けの輸出が減ったといって、財界などを中心に大騒ぎすることは目に見えているが、とんだ勘違いである。日本企業はハナから中国に輸出などしていなかったのだ。
最終消費地としての本当の中国市場はすでに欧米企業に牛耳られている。
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