加速する日本の海外投資。所得収支の増加に貢献
日本の海外投資が加速している。財務省によると、2013年末における日本の対外純資産は過去最高の325兆円に達した。また海外直接投資の残高も前年比で3割増え、初めて100兆円を突破した。海外投資の加速は、日本の所得収支を向上させ、経常赤字拡大のスピードを抑制する効果がある。
日本の企業や政府、個人が海外に持つ資産から負債を差し引いた対外純資産残高は325兆円であった。
2011年末には265兆円、2012年末には296兆円となり、2013年に入って300兆円を超えた。主な要因は円安と海外直接投資の増加である。
海外直接投資残高は約118兆円と前年比で30%以上の増加となり、過去最高を記録している。ソフトバンクなどによる海外大型買収が相次いだことが数字を押し上げた。
リーマンショック以降、日本の製造業は海外への工場移転を加速させてきた。海外の工場建設は現地法人への出資が伴うので、統計上は直接投資の増加という形で表れる。
だが、このところの残高増加は少し様子が違ってきている。ソフトバンクによる米スプリントの買収やLIXILグループによる独企業の買収など、大型海外M&Aの割合が高まっているほか、地域的にもアジアではなく、米国や欧州の伸びが大きい。
工場の海外移転は、グローバルな価格競争が原因なので、進出した国の価格競争力がなくなれば、その投資は実質的な価値を失うことになる。しかし、企業のM&Aは長期間にわたって投資価値を維持できる可能性があり、その効果が永続する。
日本は産業構造の転換に直面しており、すでに慢性的な貿易赤字体質になっている。経常収支が赤字になるのも時間の問題である。経常収支の赤字化が成長を鈍化させるわけではないが、国際収支の急激な変化は国内市場に大きな影響を及ぼすことになる。その変化はなるだけ緩やかな方がよい。
海外への投資残高が増えれば、そこから得られる利子や配当の収入が増える。これによって日本の所得収支は増加するので、経常収支をプラスにする効果がある。海外投資の進展は、現在の日本にとって非常に望ましい動きといってよいだろう。
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