OECDの幸福度ランキング2014。気持ちの問題なのか、物理的環境なのか?
経済協力開発機構は2014年5月、世界幸福度ランキング2014を発表した。日本の幸福度は36カ国中20位であった。昨年は21位だったので、ランキングの結果は大きく変わっていない。
こうしたランキングは、総合順位にばかり注目が集まるが、むしろ重要なのは、ランキングを算定する組織が、どの様な項目を設定し、それに対して各国がどのような結果になっているのかという点である。
OECD加盟国の中には、ポーランド、トルコ、メキシコ、韓国といった国もあり、その中で日本が20位というのはかなり低い結果と考えてよいだろう。
日本のランクが低い理由は、健康、主観的幸福度、ワークライフバランス、政治の市民参加などで著しく低い点が付いているからである。
日本は世界一の長寿国であるにもかかわらず、健康面でのランクが低いというのは現実と矛盾する。しかし、このランキングは幸福度なので、本人がどう思っているかが重要となる。
健康の評価項目には平均寿命も入っているが、一方で、自身の健康状態についてどう考えているのかという項目もある。この部分についていえば日本は世界最低ランクである。つまり、日本人は世界でもっとも長生きしていながら、世界でもっとも自身を不健康と考えていることになる。
主観的幸福度については36カ国中28位、ワークライフバランスでは長時間労働という項目で36カ国中33位となっている。また、生活においてどのような面を重視するのかという調査では、日本は安全に対する重要度が高く、生活の満足度に対する重要度が低いという結果も出ている。日本は世界で最も安全な国だが、それでも安全に対する要求度が極めて高いのである。
このようにして考えると、物理的な生活水準よりも精神面の影響が大きいようにも思えるが、トップ3カ国の顔ぶれを見るとそうでもない。オーストラリア、ノルウェー、スウェーデンは、物理的な水準も高く、一方で精神的な満足度も高い。
環境が悪くても満足度が高いということはあり得るだろうが、やはり精神的満足度は物理的環境と密接な関係にある。長時間労働や相対的貧困率など、日本が改善すべき点が多いのは事実であろう。また医療についても、単に寿命を延ばすためのものではなく、患者の生活の質に重点を置いたやり方にシフトするといった工夫も必要になってくるかもしれない。
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