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スペイン民主化の象徴であるカルロス国王が退位。上からの民主主義は根付いたか?

 

 スペインのラホイ首相は2014年6月2日、国王のフアン・カルロス1世が退位すると発表した。国王の地位はフェリペ皇太子に譲位する。

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 カルロス国王はスペイン国民にとっては特別な存在である。カルロス国王はもともと、スペインの独裁者フランコ将軍が後継者として育て上げ、将軍が1975年に死去したのち、遺言に基づいて王位についた人物である。
 だが即位したカルロス国王はフランコ将軍の体制を継承せず、民主化を進めたことで、スペインは現在の体制に移行することができた。カルロス国王は現代スペインの民主主義を象徴する人物なのである。

 だが民主主義が根ざしていない社会でこうした、上からの改革を断行すれば、あちこちに歪みが出る。こうした対立をうまくまとめ、民主的な体制を維持するための精神的支柱がカルロス国王だったわけだが、それゆえにカルロス国王への批判はタブー視されていた。国王の権威が失墜すると、せっかく 構築しかかった民主主義が崩壊してしまうのではないかという恐怖感が国民の間にあったからだ。

 だが最近では王室批判も公然と行われるようになり、以前とはだいぶ雰囲気が違ってきている。カルロス国王の次女であるクリスティーナ王女が、脱税と資金洗浄(マネーロンダリング)の容疑で裁判所に召喚されたのは、その良い例といえる。王室に敬意を払いつつも、容赦ない批判を浴びせるというのは、民主主義が定着してきたひとつの証拠でもある。

 次女のスキャンダルが噴出したことや、国王が高齢で健康不安があること、一方でフェリペ皇太子の国民からの人気が非常に高いことなどを総合的に考え、カルロス国王は、制度にはない、生存中の退位を決断したものと考えられる。

 フェリペ皇太子がスムーズに王位を継承し、混乱することなくスペインの統治を行うことができれば、スペインはようやく軍事政権という負の遺産を解消できるかもしれない。
 上からの民主化が行われた故に、まだ完全に民主主義を消化しきれていないという点で、スペインと日本には共通点がある。フェリペ皇太子即位後のスペインがどのような道筋を辿るのか、日本人にとっても要注目である。

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