ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

ソフトバンクがロボットを他社に先んじて製品化した本当の狙い

 

 ソフトバンクモバイルは2014年6月、人と対話することができるロボット「Pepper」を発表した。来年2月から販売を開始する。

pepper

 Pepperは、人の声や表情を認識する機能を搭載しており、人間とスムーズにコミュニケーションを取ることができる。発表会場では早速ジョークを飛ばして参加者の笑いを誘っていた。
 人とスムーズなコミュニケーションを取ること自体は、技術的に目新しいことではなく、同社以外のロボットでも実現が可能である。Pepperがもたらすインパクトの大きさは、機能面ではなく、むしろ、そのビジネス・モデルにある。

 ソフトバンクは、Pepperのプログラミング仕様を公開しており、誰でもPepperを制御するプログラムを作成することができる。専用の開発ツールを提供しているほか、作成したプログラムを公開し配布するためのWebサイトも近くオープンさせる予定だ。

 こうしたやり方はオープン戦略と呼ばれており、IT業界が多用してきたものである。あえて仕様を公開し、多くの人をアプリケーション開発に参加させることで、一気にデファクトスタンダードを握る作戦である。多数の知恵を集約させることで、想像もしなかったような画期的な応用例が生まれる可能性もある。

 米国ではお掃除ロボット「ルンバ」の開発者が、軽作業をやらせるための安価な産業用ロボット「バクスター」を世に送り出している。バクスターもプログラム仕様を外部に公開しており、誰でも新しいアプリケーションを開発することができる。

 これまでロボットの分野は工場の生産ライン向けの高価な製品が中心であり、その仕様はすべて各社独自のものであった。だが今後、市場の拡大が予想されているのは、店舗、自宅、介護施設といったサービス用途である。こうした市場では、安価であることと、オープンであることが極めて重要となる。

 その先にあるのは、やはり個人情報の活用ということになるだろう。Pepperはクラウド上にあるシステムで制御される仕組みを採用しており、通信会社である同社との親和性は高い。

 場合によってはグーグルやフェイスブックと同じように、利用者の情報を収集し、マーケティングに活用するというやり方も考えられる。極端な例を考えれば、会話内容など、ロボットが収集した情報を提供することに同意すれば、タダでロボットが使えるといったビジネス・モデルも成立するのだ。これが実現すると、グーグルやフェイスブックの立場を超えることも不可能な話ではない。

 グーグルは世界のロボット会社をすさまじい勢いで買収しているが、この部分の優位性を絶対に他社に譲りたくないと考えているからである。もともと通信インフラを持つソフトバンクは意外と有利な立ち位置にいるのかもしれない。

 - 経済, IT・科学 , ,

  関連記事

abe20150630
財政再建は経済成長頼みで結論先送り。肝心の成長戦略は弾切れ状態

 政府は2015年6月30日、経済財政運営の基本方針「骨太の方針」と新しい成長戦 …

monju
政府が「もんじゅ」見直し検討。核燃料サイクルに関する国民的議論が必要な時期

 日本の核燃料サイクルの中核となる高速増殖炉「もんじゅ」について、政府が計画の見 …

akiya
低所得者の住居支援に空き家を活用。成熟国家としては正しい方向性

 国土交通省は高齢化の進展によって公営住宅が足りなくなることから、空き家を活用す …

meti03
官製ベンチャーキャピタルの産業革新機構は、まるで公共工事のゼネコン

 産業革新機構は2014年1月8日、日米両国のベンチャー企業育成を手がける株式会 …

towerbridge
英中央銀行がフォワードガイダンスを見直し。これってどういう意味?

 英国の中央銀行であるイングランド銀行は2014年2月12日、金融政策の見通しを …

setsubitousi
設備投資の先行指標にちょっとした異変。設備投資復活か単なるブレか?

 アベノミクスにおける最大の懸念材料の一つであった企業の設備投資に変化の兆候が見 …

kosokudoro02
高速道路無料化は永久に無理?高速3社が老朽化対策に10兆円必要との試算

 高速道路3社(東日本、中日本、西日本)は4月25日、高速道路の老朽化対策に関す …

no image
産業革新機構がルネサスを愛国救済。まるで中国の反日デモとの声も

 産業革新機構が、経営不振に陥っているルネサスエレクトロニクスに対して、トヨタ自 …

no image
鴻海精密工業のカリスマ経営者「郭台銘」氏はどんな人物?

 最近その名前をニュースで目にしない日はない、鴻海精密工業のカリスマ経営者、郭台 …

no image
相次ぐ大手企業の経営危機によって、会社の所有権論争が事実上決着した

  東京電力による原発事故や、シャープやルネサスエレクトロニクスの巨額赤字など、 …