ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

LINEの情報が韓国政府に筒抜けという報道。上場を前にLINEが大波乱

 

 無料通話チャット・アプリLINEの情報が韓国政府に筒抜けになっているという報道が波紋を呼んでいる。LINEの森川社長はすぐに全面否定のコメントを出したが、騒動はすぐには収まりそうもない。LINEは上場を前に大きな課題を抱えてしまった格好だ。

linemorikawa

 きっかけは、韓国の国家情報院(旧KCIA)が、LINEを傍受し、収拾したデータを欧州に保管、分析しているという月刊誌FACTAの記事。韓国政府のサイバーセキュリティ関係者が、日本の内閣情報セキュリティセンター(NISC)との協議の場で認めたという。

 傍受の方法はシステムに直接侵入するのではなく、通信回線とサーバーの間でワイヤタッピングするというもので、韓国の国内法では違法にならないという。記事では、LINEの日本人ユーザーの通話データなどが韓国政府に送られているとしている。

 LINEの森川社長は、「LINEの通信は、国際基準を満たした最高レベルの暗号技術を使って通信されていますので、記事に書かれている傍受は実行上不可能です」と反論し、「看過できない記事」であるとしてFACTAに強く抗議している。

 元CIA職員であるスノーデン氏の事件で明らかになったように、各国の情報機関が通信回線からデータを抜き取っていることはもはや常識である。LINEは韓国企業ネイバーの子会社であり日本資本ではない。同社が韓国政府からの情報収集対象になっていないことの方がむしろ不自然なことである。ネットでは、森川社長が「傍受は不可能」と言い切ってしまっていることから、逆にそれを不安視する声も上がっているようだ。

 ただ、そのことをもってLINEが危険なのかという議論はまた別の話である。やりとりされている情報を解読できるかは、最終的には情報収集する側のリソースに依存している。森川社長が述べているように、すべての情報を日常的に解読することは実質的に不可能であろう。だが、特定の人物などに対して、情報機関が目的を持って解析を試みた場合には、どんな情報でも丸裸になってしまうリスクは残る。

 これはLINEに限った話ではなく、あらゆるネットサービス共通の課題といえる。セキュリティが100%かどうかという議論はあまり意味をなさない。巨大な情報組織が特定対象に的を絞り、目的を持って行動すれば、たいがいのことは実行できてしまう。
 だが、一般的な利用者が危険にさらされているのかという点では、必ずしもそうとは言い切れないし、韓国政府が日本など諸外国との競争のためにこのデータを利用としたとしても、最終的にはかけたコストと成果のバランスの問題ということになる。

 もっとも、森川社長の対応は少し軽率だったかもしれない。FACTAはすぐに、「LINEは韓国当局から、「おたくの暗号は破っておりません」とのお墨付きを得たのでしょうか」と再反論を掲載している。また「もし抗議するなら、LINEは韓国政府に対して抗議すべき」とも主張している。韓国資本の会社だから韓国政府に抗議できず、報道したFACTAを批判しているのではないかという論旨である。

 確かに、韓国政府がLINEを盗聴しているのかについて、LINE側が本質的な意味で確認する手段はない。また、この情報をFACTAにリークした情報源は、意図を持ってリークした可能性が高いが、情報の内容が内容だけにFACTA側も100%のウラを取ることは不可能である。情報源の存在そのものをFACTAが捏造したのでなければ、FACTAの報道を批判するというのは、スジ違いであろう。

 LINEは久々の超大型上場銘柄として市場で大きな注目を集めている。上場を前にした単なる情報戦なのか、今後さらに問題が大きくなるのか、現時点ではまだ何ともいえない。

 - マスコミ, 政治, 社会, IT・科学 ,

  関連記事

kokkaigijido
安全保障関連法案の成立がほぼ確実に。空虚さばかりが目立った国会審議

 今国会最大の焦点であった安全保障関連法案が2015年7月16日、衆議院を通過し …

rig
シェールガス開発の是非をめぐってフランスが迷走。日本が学ぶべき点は多い

 フランスのモントブール生産回復相は2014年1月29日、フランスでは全面禁止さ …

abe20141125
盛り上がる解散の「大義」に関する論争。結論は選挙の結果次第?

 衆議院を解散する「大義」に関する議論が活発になっている。野党側が「アベノミクス …

3946377
最近注目を集める金本位制復活論。だが日本人にこれを導入する覚悟があるとは思えない

  米国大統領選挙が終了しオバマ大統領が再選されたことで、当面現状の金融政策が維 …

futenma
沖縄への基地集中は「差別」という調査結果がもたらす地政学的インパクト

 沖縄県が2012年に実施した県民意識調査において、米軍基地の多くが沖縄に集中し …

seifusenyouki02
安倍首相の東南アジア歴訪が示す「国際競争力なくして安全保障はない」という事実

 安倍首相は7月25日午前、3日間の日程でマレーシア、シンガポール、フィリピンの …

mof03
2015年度予算の概算要求基準を閣議了解。予算膨張で要求額は100兆円を突破

 安倍内閣は2014年7月25日、2015年度予算の概算要求基準を閣議了解した。 …

algeriagas02
アルジェリア軍が最終攻撃を行い人質が多数死亡。国によって異なる人質に対する考え方

 イスラム武装勢力による天然ガス施設の人質事件で、アルジェリア軍は19日、最終攻 …

kishidaputin
一筋縄ではいかない日露交渉。プーチン大統領は意図的な遅刻で日本側を翻弄?

 岸田文雄外務大臣はロシアのプーチン大統領らとモスクワで会談し、今月に開催される …

keizaizaiseihakusho
日本企業は効果の薄い新技術ほど導入に積極的?

 政府は2017年7月21日、2017年度版「経済財政白書」を公表した。今回の白 …