国民年金納付率が向上。だが実態は督促の強化と、給付対象者の減少
厚生労働省は2014年6月23日、2013年度の国民年金の納付状況について公表した。国民年金の納付率は60.9%と前年度より1.9ポイント改善した。ただ詳細を見ると、年金納付の状況が改善したとはいいにく状況だ。
納付率は保険料を納めた月数を納付すべき月数で割った数字。納付率を向上させるためには、督促などを強化し、納付金額(納付月数)そのものを増やす方法と、納付対象者(納付すべき月数)を減らす方法の2種類がある。前者は分子を増やし、後者は分母を減らすというやり方である。
本来は納付金額の増加によってのみ納付率が改善することが望ましいのだが、実際はそうでもない。納付された金額はこのところ毎年減少している。一方で、納付対象者も同じように毎年減少しているのだが、ここ2年は納付対象者の減少スピードの方が速い。納付率が上昇しているのは、納付対象者が減っていることが大きく影響しているのだ。
これは所得が低い人に納付免除の申請をしてもらい、数字上、納付対象者の数を減らしているからである。督促などを強化した効果もあるが、本質的な状況はあまり改善したとは言い難い。
現実問題として、国民年金の対象となっている若年層の所得は低く、払いたくても払えない人が多い。年齢別の納付率を見ると、20~24歳までは56%の納付率があるが、25から29歳になると50%まで一気に低下してしまう。学生のうちは親の負担で納付していたが、社会人になって十分な所得が得られず、納付できなくなっている状況がうかがえる。
地域別に見ると、納付率が高かった上位3県は、島根、新潟、山形であった。逆に納付率が低かったのは、沖縄、大阪、埼玉であった。東京は次にランキングされているので、沖縄を除くと、基本的に大都市圏での納付率が低い。
一方で保険料の全額免除割合は、東京、神奈川、埼玉など首都圏は軒並み20%台となっており、他の地域と比較すると圧倒的に低い。首都圏には仕事が豊富にあることが主な要因と考えられる。
保険料は収入がなければ納めることができない。督促を強化したところで、その効果は限定的である。当たり前の結論だが、雇用を拡大することしか、根本的な意味で納付率を向上させる方法はないようだ。
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