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最低賃金引き上げの議論が始まる。だが経営側は以前として慎重姿勢

 

 最低賃金の引き上げに関する議論が政府内で始まった。厚生労働省は最低賃金の目安を決定する審議会を7月1日からスタートし、具体的な検討に入った。物価の上昇と消費増税が重なり、労働者の購買力は低下している。基本的には引き上げの方向で議論が進められているが、額については、経営側の慎重姿勢が目立つ。

 saiteichingin 最低賃金は地域の実情に合わせて地方自治体ごとに金額が決定される。だが、厚生労働省の審議会がおおよその目安を決定し、その金額を参考に、各地の審議会が金額に関する議論を進めていくことになる。

 現在の最低賃金は、もっとも高い東京で869円、もっとも安い県で664円、全国平均では764円となっている。今年は、平均値で15円ほど引き上げ780円前後にする方向で議論が進められている。率にすると約2%ということになる。

 5月の消費者物価指数の上昇率は3.5%となっており、消費税の影響を除いても1.4%物価が上がっている。一方、賃上げ率は、連合の発表によると、大企業では約2.2%、100人未満の中小企業では約1.7%だ。賃上げが実現しなかった中小企業も多いことを考えると、庶民の生活はかなり苦しくなっている。特に消費税の増税は低所得者への影響が大きいことを考えると、最低賃金の2%上昇は妥当なところだろう。

 審議会には、労働側と経営側の双方から委員が参加しているが、経営側の姿勢は引き続き慎重だ。大都市圏では最低賃金の水準で人を確保することはほぼ不可能な状況だが、地域によってはそうでもない。また雇用のミスマッチから、求人倍率も分野ごとにかなりのバラツキが生じている。全体としてみれば、水準引き上げを行う状況にはないというスタンスだ。

 もっとも、国際的に見ると、日本の最低賃金はかなり安い。フランスは9.4ユーロ(約1300円)、英国は6.3ポンド(約1100円)、米国は州によって異なるが、各州を平均するとだいたい8ドル(約816円)程度になる。ドイツで新しく導入される最低賃金は8.5ユーロ(約1180円)になる予定だ。

 米国は世界で最も過酷な弱肉強食社会といわれるが、それでも最低賃金は日本より高い。ドイツは昨年まで最低賃金がなかったが、新しく導入される最低賃金は、従来の労働市場における最低ラインが基準になっている。つまり最低賃金制度がなくても、1200円近い最低賃金が維持されていたのである。さらに驚くべきなのはスイスで、国民投票で否決されたものの、一時は22スイスフラン(約2500円)の最低賃金が検討されていた。

 スイスやドイツの例を見れば分かるように、経済が健全であれば、最低賃金を法律で定めなくても、市場メカニズムによって賃金の水準は十分に確保されることになる。日本の最低賃金の安さは、日本経済がまだ機能不全の状態から十分に回復していないことを示しているのかもしれない。

 - 社会, 経済

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