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マネーストックの伸びが5カ月連続で減少。だが追加緩和の議論は下火に

 

 日銀は2014年7月9日、6月のマネーストック(マネーサプライ)を発表した。主要指標であるM3(現金と預金)の伸び率は、前年同月比2.4%増の1187兆円だった。伸び率の減少は5カ月連続となっている。

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 マネーストックは金融機関から市中に供給されるマネーの総量のことを指す。これに対して日銀が金融機関に供給しているマネーの量はマネタリーベースと呼ばれる。
  量的緩和策は、マネタリーベースを増やす政策であり、日銀はマネタリーベースを年間約70兆円増やすことを目標としている。
 マネタリーベースが増えれば、理論上、銀行は貸し出しを増やすことになるため、市中に供給されるマネーが増えてくる。これが量的緩和策の狙い である。

 もっとも、日銀が国債を大量に買い取り、その代金を当座預金に振り込んだとしても、金融機関がそのお金を企業などに貸し付けなければ、マネーストックの量は増えない。実態経済に直接影響を及ぼすのは、現実に市中に出回るお金なので、量的緩和策の効果という点でマネーストックの数値は注目されている。

 消費増税の駆け込み需要の反動で、このところ足元の経済には減速傾向が見られる。設備投資の先行指標といわれる機械受注の数字も5月は前月比マイナス19.5%と大幅な減少となった。内閣府では設備投資の基調判断を「増加傾向にある」から「増加傾向に足踏みがみられる」に変更している。

 ただマネーストックの減少がそのまま景気の減速を示しているのかは何ともいえない。マネーストックの伸び率は確かに減少しているが、マネタリーベースの伸び率も同じく減少しているからだ。
 日銀は一定額、マネタリーベースを増加させている。絶対額は毎月順調に増加してくるが、計算上、伸び率は鈍化してくることになる。量的緩和から1年以上が経過しているので、マネタリーベースの伸び率が鈍化してきており、それにともなってマネーストックの数字も鈍化しているだけと見ることもできる。

 いずれにせよ、企業が積極的に借り入れを増やして、設備投資を実施する環境にないことだけは確かである。日本企業の内部留保は304兆円と過去最高を記録したほか、現預金の残高も150兆円を超えており、企業は手元に多額の現金を残している。この状況では、設備投資を行うにしても、手元資金を使ってしまうので、銀行からの借り入れが大きく増えることはない。借り入れを大幅に増やすようになるまでには、まだ時間がかかる可能性が高い。

 一時期は追加緩和の議論が盛り上がったが、現在では下火になっており、近いタイミングでの追加緩和を予想する人は少なくなっている。しばらくは様子見が続く可能性が高い。

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