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650万円の生活費を2年支給するというベンチャー支援策が登場する背景

 

 政府が、起業を後押しするために、650万円の生活費を最長で2年間支給する制度を実施すると報じられている。大企業に勤務する優秀な人材の起業を促すための措置だが、効果があるのか疑問視する声が上がっている。

 meti03 毎月給料が振り込まれるサラリーマンとは異なり、起業家は起業直後から資金繰りに追われることになる。
 特に革新的な技術などを開発するベンチャー企業の場合、会社をスタートさせてから、実際に製品やサービスが利益を生み出すまでには一定の時間が必要となるため、その間の資金をどう手当するのかは、多くの起業家が悩むところである。

 今回の施策では起業家候補者が、経産省所管の独立行政法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」の契約社員(実際には支援策専用の管理法人と雇用契約を結ぶ)となる形をとり、NEDOが生活費を「給与」として支払う。当面の生活費が維持されることで、サラリーマン出身の起業家候補者が安心して事業の立ち上げに取り組むことができるとしている。

 日本は起業家の活動がOECD加盟国中、最低水準といわれており、安倍政権では成長戦略の一環としてベンチャー支援を掲げている。
 ただ日本の起業活動が低水準であることは、かなり以前から指摘されていた問題であり、過去20年にわたって政府による積極的な支援策が続けられてきたというのが実態である。だが残念なことに政府によるベンチャー支援について目立った成果は上がっていない。

 起業直後の生活費に対する不安というのは、起業をためらう理由のひとつではあるかのもしれないが、多くの日本人が起業しない理由はおそらく別のところにある。
 それはベンチャービジネスそのものや、失敗者に対する不寛容など、社会的な要因が大きいと考えられる。こうした根本的な解決策なしに、とりあえずの生活費を支援しても効果は限定的だろう。ネット上では「バカバカしい」と切って捨てるようなコメントも散見される。

 経済産業省もこうした状況を理解していないわけではない。同省では当初、ベンチャー企業の活動が不活発なのは資金調達側に問題があると考え、ベンチャーファンドなどに関する法整備を積極的に行ってきた。また、大学の研究成果の事業化支援など、一通りの支援策は実施している。今回の施策はこうした支援策がうまく機能しなかった末に出てきたものである。

 考え方によっては、こうした馬鹿げた支援策まで飛び出してくるほどに、日本の起業環境は末期的状態に置かれていると解釈することもできる。

 グローバル市場では激しい競争を勝ち抜くため、大企業もそれなりのリスクを取る必要がある。ベンチャー企業が開発した技術を、リスク覚悟で採用するのは大企業であり、そうした大企業が存在するからこそ、革新的なベンチャー企業も生まれてくる。

 しかし日本の大企業の多くは、米国で有名になったベンチャー起業には日参するものの、国内のベンチャー企業の技術やサービスを積極的に採用したがらない。社会全体として革新を後押しするメカニズムが働いていないのだ。

 これまで国内のベンチャー企業支援策には累計で数兆円の資金が投じられてきた。日本のベンチャービジネスの支援策はどうあるべきなのか、そろそろ、ホンネの議論が必要な時期に来ている。

 - 経済 ,

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