ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

金融庁で企業統治改革の検討が始まる。本当に日本人はガバナンス強化を望むのか?

 

 上場企業の企業統治(コーポレートガバナンス)に関する具体策を検討する有識者会議が2014年8月7日から金融庁で始まった。企業側は慎重姿勢を崩しておらず、どの程度踏み込んだ内容となるのか注目されている。

tosho

 日本の上場企業はかなり以前からコーポレートガバナンスが不在であると指摘されており、海外の良質な機関投資家が日本株を積極的に購入しない要因のひとつにもなっていた。
 著名投資家であるウォーレン・バフェット氏も、間接的に買収するといった事例を除いては、原則として日本企業に投資しない。バフェット氏は、決してその理由を語らないが、日本企業の透明性の低さを問題にしている可能性は極めて高い。

 安倍政権では、成長戦略の一環として、企業統治の強化をうたっている。今回の有識者会議はこうした政府の意向を受けて具体策を検討するために設置された。

 具体的には複数の社外取締役の設置や株式相互持ち合いの制限などが検討されている。ただ企業側は、経営の自由度が奪われるとして慎重姿勢を崩しておらず、どの程度、踏み込んだ内容になるのかは、今のところ何ともいえない。

 日本企業のガバナンス不在が続いてきた背景には、複雑な事情がある。ガバナンス不在の状態は、実は多くの日本人が求めてきた結果でもあるからだ。

 日本社会には企業の所有者である株主が権限を行使し、経営に介入することを批判する風潮がある。このため、日本の上場企業経営者のほとんどは、従業員からの内部昇格であり、外部からの影響を受けずに経営者になってきた。

 このような状態は多くの大企業従業員にとって心地良いものである。内部昇格による経営者はドラスティックな改革ができないので、基本的に現状維持となる。経営が傾いたとしても、従業員の地位や報酬は担保されやすい。日本の大企業で成果主義が定着しないのも同じような理由からである。

 もし有識者会議で想定されているようなガバナンス強化策がすべて実施されれば、この光景は一変する。企業の業績はさらに上向き、株価も上昇するだろう。生産性も向上するので、それに合わせて従業員の賃金も上昇する可能性が高い。

 一方、企業は余剰人員を抱える正当な理由がなくなってくるため、従業員の数自体は減ってくる可能性が高い。全体としてみれば、能力のある従業員が高い報酬をもらう代わりに、労働市場には人が余るという状態になる。

 こうした状態は、維持可能性に疑問符が付く公的年金にはプラスの効果をもたらす。ガバナンス強化とそれに伴う株価上昇によって最大の恩恵を受けるのは、日本最大の投資家である公的年金だからである。

 乱暴な言い方をすれば、成果主義が徹底され、厳しい競争社会となるが、年金の財政は改善する方がよいのか、現在のようなぬるま湯的体質が維持される代わりに、危機的な年金財政が続く方がよいのかという選択になる(株価の上昇だけで年金財政を改善できるわけではないが)。

 ちなみに公務員にとってこの改革はメリットが大きい。これまで社外取締役を置く企業が少なかったため、独立して社外役員を務めることができる人材が不足している。当面の社外役員人材として、官庁OBが有力視されているからだ。社外役員は公務員の新しい天下り先となるだろう。

 - 政治, 経済 ,

  関連記事

tpphawai
TPPは最終合意に至らず閉幕。今後の政治日程は極めて厳しい

 環太平パートナーシップ協定(TPP)閣僚会合は2015年7月31日、最終合意に …

abeyosaniinkai201402
安倍政権が集団的自衛権行使の議論を再開。一部からは遅きに失したとの声も

 安倍政権が集団的自衛権の行使容認に向けて再び動き始めた。2014年2月5日、参 …

apple
アップルが株主への現金還元を検討。日本経済再生のヒントがここにある!

 多額の現金退蔵が株主から問題視されている米Appleは2月7日、株主への追加の …

no image
オイルマネーがフランスの貧困地区整備事業に進出。是非を巡って議論噴出

 フランスでは、オイルマネーを使って貧困地区整備事業を行うプランが浮上し話題とな …

ginzafudosan
土地価格はとうとう上昇に転じたが、二極分化の傾向がより鮮明に

 国土交通省は2016年3月22日、2016年の地価公示を発表した。商業地ではと …

canonfactory
キヤノンの国内生産回帰は評価すべきだが、雇用の増加につながるわけではない

 キヤノンは2015年までに自社製品の国内生産比率を現在の42%から50%へ引き …

pccw
外国人投資家による都心の不動産取得が相次ぐ。本当に需要はあるのか?

 東京の不動産市場が活況を呈している。円安によって外国人投資家による買いが増加し …

apple
注目のアップル四半期決算。減益となった最大の理由は利益率低下と研究開発費の増加

 米アップルは4月23日、注目の第2四半期決算(2013年1月~3月期)を発表し …

abe20140220
政府内部で法人税減税の議論が始まる。問題の本質は課税ベースの拡大にあり

 政府内部で法人減税に関する具体的検討が始まった。経済財政諮問会議2014年2月 …

bouekitoukei201307
7月の貿易統計は赤字拡大。そろそろ貿易赤字を前提にした産業政策を議論すべき時

 財務省は8月19日、7月の貿易統計を発表した。輸出額から輸入額を差し引いた貿易 …