日本初のLCCだったはずのスカイマークが、LCCとの競争で経営難の皮肉
国内航空3位のスカイマークの経営が悪化している。格安航空会社(LCC)との競争激化と円安による燃料費高騰で採算が悪化。同社の支払い能力を疑問視したエアバス社が、超大型旅客機A380の契約解除を通告した。エアバス社に支払った前払い金が返還されない可能性が出てきたほか、場合によっては巨額の違約金が追加される可能性もある。
スカイマークは、エアバスの超大型旅客機A380を合計6機発注し、前払い金として約260億円をすでに支払っている。今回の機材調達は総額2000億円近くになる巨額なもので、総資産が700億円のスカイマークにとっては過大な水準といえる。
もっとも、スカイマークはこれまで無借金経営を続けてきており、前払い金の納付までは特に問題はなかった。
エアバスと契約を結んだ2011年時点では、同社は100億円の経常利益を上げており、そのまま順調に経営が続けば、何とか採算が合うはずだった。
だがその後の円安とLCCとの競争激化が同社の状況を大きく変えた。LCCが多数参入してきたことで搭乗率が低下し、そこに円安による燃料費の高騰が直撃した。
エアバス社から前払い金が返還されない場合、260億円近い特別損失が発生する可能性がある。同社の自己資本は400億円近くあるので、財務体質は一気に悪化するものの、まだ何とかなるレベルである。問題はエアバス社が求めているといわれる違約金である。
通常の商慣行では、前払い金以上に違約金を支払うことは考えにくいのだが、スカイマークが何としてもA380を購入したいので、不利な条件の契約を受け入れている可能性がある。700億円ともいわれる違約金の支払いが発生した場合には、借り入れや増資など、資本政策を根本的に見直さない限り、同社は経営が継続できなくなる。
それにしても、日本におけるLCCの先鞭をつけたはずの同社が、LCCとの競争で経営難になるというのは何とも皮肉である。同社が創業したのは1996年、世界的にLCCが勃興し始めた時期であり、同社の試みは非常に画期的なものであった。当時、サービスを開始した諸外国のLCCは、各社とも急成長を遂げ、既存の大手航空会社を超える規模に成長している。
だが硬直した航空行政の影響で完全なガラパゴス市場となっていた日本では、LCCのビジネスは定着せず、スカイマークはLCCの旗を降ろさざるを得なくなった。全世界でLCCが席巻する状況になり、ようやく日本にもLCCが多数就航するようになったのは、スカイマークが就航してから20年も経った今である。
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