長期金利が0.5%割れ。量的緩和策スタート時の水準に戻る
日本の長期金利が一段と低下している。10年物国債の利回りは約1年半ぶりに0.5%を下回った。基本的には、米国の金利低下や日銀による量的緩和策の影響を受けたものだが、長期的な日本経済の先行きを暗示しているともいえる。
長期金利がこの水準まで低下していたのは、日銀による量的緩和策が始まる2013年4月のことである。量的緩和開始後、金利は急騰し、一時は0.8%を超えたものの、その後、金利は徐々に低下。とうとう量的緩和策スタート時の水準まで戻った。
このところウクライナ情勢の悪化や欧州経済の不透明感から米国債が買われており、米国の金利が急低下している。7月に入ってからの金利低下は国際情勢の影響が大きいが、あくまで短期的な要因である。長いスパンで見れば、日本の金利は国際情勢に関わらず、一貫して低下が続いている状況だ。
量的緩和策を実施すれば、インフレ期待をもたらす一方、国債の買い入れによって金利低下の圧力も加わる。名目上の金利が上がらなくても、インフレ期待が生じれば実質金利は低下することになる。
インフレ期待による実質金利の低下によって、金融機関の貸し出し増加を促すことは、量的緩和策の狙いのひとつである。だが現時点においては、国債買い入れの影響だけが顕著になっており、融資の大幅な増加は見られない。
長期金利は、最終的にはその国の名目成長率に収束してくるといわれる。一貫して金利の低下が続いているということは、国債に代わる有望な投資先がないことを示している。つまり、市場は日本の成長は限りなくゼロに近く、物価も上昇しないと見ていることになる。
もちろん、現在の金利低下は国債バブルであり、今後一気に顕在化する金利上昇の前触れに過ぎないという、より悲観的な見方もある。いずれにせよ、現時点においては、景気の先行きに明るさが見えないのは確かなようである。
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