ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

民法改正で不動産賃貸業は本格的なサービス産業に脱皮できるか?

 

 法務大臣の諮問機関である法制審議会は2014年8月26日、民法における債権関係の規定に関する改正案をまとめた。民法の本格的な改正は1896年の法律制定以来、初めてとなる。来年の通常国会への提出を目指す。

chintaiapart

 民法の改正案の中には、個人保証、未払い金の時効、約款、法定利率など様々な項目が含まれているが、一般消費者にとって影響が大きいのは、賃貸住宅に関する項目である。
 改正案では、これまではっきりしていなかった敷金に関する定義が明文化される見通しで、賃貸住宅の敷金返還に関するトラブルの減少が期待される。

  現在の民法では、敷金に関する項目はあるものの、その範囲や返済義務要件などについては記載がなかった。また退去時の、原状回復義務についても、通常使用による損耗は対象にならないという明文化された規定は存在していなかった。

 すでに判例などでこれらの問題は法律上クリアされているが、賃貸ビジネスの現場では、条文にないという理由で、敷金が返還されない、あるいは過剰な修繕代を請求されたというケースが後を絶たなかった。
 改正案では、敷金の定義や返還義務を明確化するとともに、原状回復義務については「通常の使用による損耗や経年変化は含まない」と定義されることになった。家を壊したり、過剰に内部を汚したというようなケースを除いては、退去時に高額の修繕代を求められるケースは少なくなりそうだ。

 だが、こうした貸し主のスタンスが半ば許容されてきた背景には、借り主の権利が過剰に保護された法制度の存在も大きく影響している。一旦、住宅を貸し出してしまうと、家賃の滞納などがあってもなかなか強制退去を実施できないといった問題があり、一部の貸し主はそのリスクを穴埋めするため、借り主に対して過剰な請求を行っていたわけである。

 こうした古い法体系は改正が進められ、定期借家契約など新しい概念も導入された。たが、日本では不動産賃貸業が、成熟した産業になっておらず、貸し主の中にはいまだに「貸してやっている」という意識を持つ人も少なくない。これほど住宅が余っているにも関わらず、今でも高齢者という理由だけで、経済状況に関わらず家を借りられないというケースは多い。

 戦争という特殊事情を背景にした非合理的な法体系が長期間存続し、借り主が過剰に保護される一方、貸し主もムラ社会的、前近代的意識から脱皮できなかったわけである。

 今回の法改正によって一部の貸し主は大きな影響を受ける可能性がある。しかし、法改正が貸し主の意識改革を促し、不動産賃貸業がしっかりとしたサービス産業に脱皮できるのであれば、日本全体としてみた場合のメリットは非常に大きいだろう。

 - 社会, 経済 , ,

  関連記事

kyositu01
体罰問題の背景には、過保護に育てられケンカをしたことがない教師の存在がある?

 全国の学校で体罰の実態が次々と明るみ出ているが、驚くべきことに、生徒がかなりの …

maruyama02
丸山発言は特殊ではない。日本人の人権感覚はズレているという認識が必要

 参院憲法審査会でオバマ米大統領に対する人種差別的発言を行った丸山和也議員は20 …

doragi02
欧州の長期金利上昇が日本にも波及。日銀に残された時間は少ない

 欧州の長期金利が上昇している。ECB(欧州中央銀行)が量的緩和策の縮小を検討し …

jenova
ジェノバの港でコンテナ船が管制塔に激突。50メートルの管制塔は完全崩壊

 イタリアのジェノバ港で5月7日、大型のコンテナ船が港の岸壁にある高さ50メート …

genkintorihiki
銀行取引にさらに煩雑な確認作業が必要に。だが肝心の犯罪防止効果には疑問の声も

 犯罪収益移転防止法(犯罪による収益の移転防止に関する法律)が一部改正されるのに …

googlecar02
日本企業は新規事業に極めて消極的。革新的事業に至っては米国の5分の1

 コンサルティング会社のデロイト トーマツ コンサルティングは17日、日本企業に …

sharp
シャープに米クアルコムが出資。だが実態は話題作りだけを目的にした技術の安売り

 経営再建中のシャープが、米国の半導体メーカー「クアルコム」から最大100億円の …

leekanyunamida
シンガポール「建国の父」リー・クアンユー死去。独立当初は、絶望感で涙を流した?

 シンガポール建国の父と呼ばれるリー・クアンユー元首相が2015年月23日、同国 …

kojinjigyonusi
個人経営の事業所の8割は後継者がおらず、パソコンの導入がほとんど進んでいない

 総務省は2015年7月10日、2014年の個人企業経済調査(構造編)の結果を発 …

mrj
MRJが初飛行に向け準備着々。ただ、日本の製造業に利益をもたらすのかは別問題

 半世紀ぶりの国産旅客機として三菱重工が開発を進めるMRJ(三菱リージョナルジェ …