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社員の発明をめぐり、今度は一転して企業帰属の方向性で議論が進む

 

 政府は、企業の従業員が発明した特許について、これまでとは反対に、原則として企業に帰属させる方向性で検討を開始した。特許庁の審議会では、具体的な制度の検討が始まっており、早ければ来年の通常国会に法案を提出する。

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 現在の特許制度では、企業の従業員が業務を通じて発明した特許について、原始的にその権利は発明者にあると規定している。企業は相当の対価を支払って、その特許を利用することができるが、相当な対価の妥当性をめぐっては、たびたび訴訟となっている。
 青色発光ダイオードを発明した元日亜化学工業社員の中村修二氏が、同社に対して20億円の支払いを求める訴訟を起こしたことは非常に話題となった(のちに中村氏と日亜社は約8.5億円で和解)。

 一連の訴訟で警戒を強めた経済界は政府への働きかけを強め、安倍政権が2013年6月にまとめた知的財産政策に関する基本方針では「発明制度について抜本的な見直しを図る」との内容が盛り込まれた。具体的には、原則として企業帰属に変更する、あるいは使用者と従業者との契約に委ねるといった内容が想定されている。

 特許庁の審議会では、経済界から、原則として企業帰属にすべきという意見が相次いでいるほか、安倍政権の意向もあり、一定の条件下で企業帰属とする方向性で議論が進んでいる。

 確かに、個人の発明であっても、企業の設備や同僚の協力なしに発明を実現するのは難しいのが現実であり、一定の報酬を支払う代わりに法人に帰属させることは、合理的な問題解決方法であると考えられる。
 ただ、発明の内容やその経緯は様々である。本来であれば、こうした帰属問題は、政府のお墨付きを利用するのではなく、企業と従業員との契約関係によって、個別に確立させるのが望ましい。政府に働きかけ、国家による担保を求めた産業界側の動きは、ある意味で当事者能力の欠如を示しているともいえる。

 技術者への対価の支払いをめぐっては、日本はグローバルスタンダードから遅れており、技術者を十分に処遇していないという論調が一部にはある。だが、その前提条件は必ずしも正しいとはいえない。

 よく引き合いに出される米国は、確かに特許の帰属については原理的に個人となるが、実質的には企業と従業員の契約に委ねられている。
 革新的な発明を行うことが確実視され、発明の対価を受け取ることができるスター技術者は確かに存在しているだろう。だが、現実には、凡庸な技術者の方が圧倒的に多く、特許の実質的権利を主張できない雇用契約を結んでいるケースがほとんどである。

 企業と技術者の貢献度合いや妥当性のある対価というものは、本来、自然な市場メカニズムで決まってくるはずである。こうした利害対立を当事者間で解決できず、根本的な法解釈が両極端にブレるという状況は、決して望ましいものではない。

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