ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

戦争に翻弄された歴史の生き証人「李香蘭」こと山口淑子氏が死去

 

 「李香蘭」の名で戦前から戦中にかけて日本と中国で人気を集め、戦後は参院議員もつとめた女優・歌手の山口淑子(やまぐちよしこ)氏が2014年9月9日、心不全のため亡くなった。94歳だった。

rikoran

 山口氏は父親が満鉄(南満州鉄道)で中国語を教えていた関係で中国で育った。
 当時の満鉄は、社員に中国語の習得を義務付けており、一定水準に達しないと昇進ができなかった。父親が満鉄社員に中国語を教える教室に小さい頃から出入りしていた山口氏の中国語は、ネイティブ並みだったといわれる。

 その後、山口氏はロシア出身のオペラ歌手から声楽を習い、たちまち上達。大変な美貌も手伝って、日中戦争開戦の翌年、満州国の国策映画会社・満洲映画協会(満映)から「李香蘭」としてデビューすることになった。これをきっかけに山口氏は戦争に翻弄され続けることになる。

 満映は、日本が満州を文化的に支配する目的で設立された国策映画会社であり、理事長には、元陸軍軍人で、無政府主義者の大杉栄氏を殺害し服役したこともある甘粕正彦氏が就任していた。
 山口氏は、日本と中国の友好関係を演出するために、中国人女優・歌手として活動させられていた。実際、「李香蘭」は日本と中国で大変な人気となっており、知らぬ人がいないほどの著名人であった。このことが終戦直後、日本に引き揚げる際に、大きな障害となっている。

 山口氏は中国人とみなされており、日本軍に協力していた山口氏には漢奸罪(国家反逆罪)の疑いがかけらた。一時は銃殺刑になるともいわれていたが、最終的に日本の戸籍謄本が中国の裁判所に提出され、日本人であることが証明されたことで帰国することができた。

 山口氏は、清朝皇族の娘で、日本軍の工作員(スパイ)でもあった川島芳子氏とも深い親交があった。川島氏も戦争に翻弄された女性として有名だが、最後は麻薬に溺れる状態となっていた。山口氏はモルヒネを打つ川島氏を何度も目撃している。
 川島氏は日本人の養子となっていたものの、もともとは清朝皇族の出身であり、中国人であった。当時の中華民国の戸籍法は血統主義となっており、同様の裁判で川島氏は日本人とはみなされず、国家反逆罪が適用され銃殺刑となっている。

 山口氏は日本に帰国後、女優として再び活躍し、1974年には参院選に出馬して当選。参院議員を3期つとめている。
 山口氏は、日本の大陸進出や満州支配の中枢にいた、まさに時代の生き証人というべき人物であった。政界引退後は公の場に姿を現すことはあまりなかったが、大きな転換点を迎えている今の日中関係について、山口氏はどう見ていたのだろうか?

 - 政治 , ,

  関連記事

abeobama
安倍首相が米議会で演説。なぜ今まで長期にわたって実現しなかったのか

 安倍首相は2015年4月29日、米議会の上下両院合同会議で演説を行った。米議会 …

KONICA MINOLTA DIGITAL CAMERA
脱原発のモデルといわれたドイツで電気代高騰。日本人が知っておくべきこととは?

 再生可能エネルギーへの転換を旧ピッチで進め、日本における「脱原発」論のモデルと …

koutei
野田元首相が公邸に住まない安倍首相を批判。歴代首相はなぜか私邸住まいが多い

 国家の安全保障を極めて重視している安倍首相がなぜ首相公邸に住まないのか?とWe …

businessman
2014年度の実質成長率見通しは1.3%に下落。その理由は消費増税ではない?

 政府の2014年度における経済成長見通しがほぼ固まった。物価変動の影響を除いた …

abetrump
安倍首相がトランプ氏にわざわざ中国企業の製品をプレゼントした政治的意味

 安倍首相とトランプ次期米大統領の会談で安倍首相がトランプ氏に贈った黄金のゴルフ …

niinami
ローソンの新浪社長がアベノミクスに賛同し賃上げを実施。政界転職の布石か?

 ローソンは7日、グループ内の若手社員の年収を平均で3%上げると発表した。年2回 …

nichukanfta
日中韓FTA交渉の第2回会合。すでにTPPに参加した日本は有利な立場に

 日中韓の3カ国で貿易や投資の自由化を目指す、日中韓自由貿易協定(FTA)交渉の …

suga04
野党分断に八面六臂の活躍。安倍政権最大のキーマン菅官房長官

 安倍政権のキーマン中のキーマンといわれる菅官房長官の動きに注目が集まっている。 …

kitachousenkakujikken
北朝鮮が3回目の核実験を強行。ただ朝鮮半島が一気に緊迫化するのかは不透明

 北朝鮮は12日午前11時57分頃、北朝鮮北部の核関連施設において3回目の核実験 …

3sha02
Amazon、Google、スタバが各国政府と税を巡るバトル。3社が連戦戦勝のワケとは?

 グローバルに展開する米国企業と各国政府のバトルが激しさを増している。  フラン …