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地方創世の具体策検討開始。だが基本戦略でコンセンサスは得られているのか?

 

 政府は2014年9月19日、地方創世について有識者の意見を集める「まち・ひと・しごと創生会議」の初会合を首相官邸で開いた。安倍政権が掲げる地方創世に関する具体策の検討を本格化させる。

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 会合の冒頭、挨拶に立った安倍首相は、「地方創生は、安倍内閣の最重要課題。景気回復の波を、全国津々浦々まで届けなければなりません」と述べた。会議では年内をメドに、今後5年間の施策について議論するとしている。

 ただ、具体的な内容の策定には困難も予想される。というのも、そもそも地方の人口減少や高齢化といった問題に対して、どういった戦略で望むのかという根本的な部分でのコンセンサスが十分に得られていないからだ。

 会合に有識者として参加している元総務大臣の増田寛也氏は「現状のままでは、多くの自治体が消滅する可能性があり、人口流出に歯止めをかける政策が必要」と主張している。政府も基本的には同様の方向性で議論を進めていくと考えられ、地方からの人口流出を止めることを政策の基本に据える可能性が高い。
 実際、安倍氏も「(地方定住を)強制するのではなく、地方に住みたい、子供を持ちたいといった国民の意欲を実現するアプローチを取る」と述べている。

 内閣府の世論調査によると、都市部に住む人のうち、「農山漁村地域に定住してみたいという願望がある」と答えた人は31.6%となり、9年前の前回調査と比べて約11ポイント増加した。年齢別では20代がもっとも高く約38.7%の人が、願望があると答えている。
 政府ではこうした調査結果をもとに、若者や中高年層が希望する生き方を実現することにより、東京への一方的な人口流入を変えることができる可能性があるとしている。

 だが現実は厳しい。この調査では確かに3割の人が田舎への移住を希望しているという結果が出ているが、時期に関する回答を見ると、20代の若者では「20年以上先」とした人の割合が約半数に達している。「すぐにでも」という人はわずか3.4%であり、その理由として多くが経済的問題をあげている。こうした障害を乗り越えて、現実に移住を実現させるためには、かなりの財政的支援が必要となる。

 人口減少社会にスムーズに対応するためには、無理に地方定住を促さず、都市部への人口集約を進めた方が効果的という考え方もある。また地方に本気で雇用を創出しようとした場合、従来の産業構造を変革する必要に迫られる可能性も高く、相当の抵抗が予想される。
 どちらにすべきなのかは、最終的には国民が判断することだが、現時点において、こうした基本的な戦略についてコンセンサスが得られている状況にはなっていない。

 このような中で、具体策の検討だけを進めてしまうと、ハコモノ行政を実施しただけで終わってしまうという、いつものパターンに陥ってしまう可能性もある。個別の具体策を検討する前に、基本的な戦略に関する議論がもっと必要だろう。

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