ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

不動産取引のネット解禁論争が過熱。第二の大衆薬論争に?

 

 非対面での不動産取引の是非をめぐって、ネット解禁派と保守派との対立が激しくなっている。一部からは、楽天とケンコーコムによる市販薬の非対面取引の議論と同じような状況になってきたとの声も聞かれる。

fudosanchirasi

 現在、国土交通省ではネットを使った非対面取引の普及について検討会を行っている。6月に作成された中間取りまとめ案には「現行制度下において対面を前提としている重要事項説明や、電子的手法による交付を認めていない各種書面の交付についても、改めてITの活用について検討する必要がある」という記述が盛り込まれており、ネットを活用する方向性で議論が進められている。

 ただ内実は、従来の取引慣行を維持したい業界団体と、楽天の三木谷社長が中心となって設立した新経済連盟などネット推進派との間で真っ向から対立する状況となっている。検討会では、議論の土台となる資料の記載が、ネット解禁を骨抜きにする内容になっているとして、新経連側が多くの要望を出している。

 日本の不動産取引は、対面が原則となっており、宅地建物取引主任者が重要説明事項について顧客に直接説明している。また資金の決済も当事者が直接顔を合わせて行われることが多い。
 ただ現実には、この重要説明事項はただの儀式になっているケースが多く、現実的な消費者保護につながっているとは言い難い。また日本の不動産取引は米国と異なり、決済に第三者が入らないため、資金決済においてリスクがあると指摘する声もある。逆にいえば、立ち会いでの決済という慣行は、こうしたトラブルを回避するために形成されてきたと考えることもできる。

 ただ、日本の不動産取引の慣行によって、著しく消費者の権利が侵害されているのかというと必ずしもそうではない。近隣地域に住む日本人どうしの取引であれば、ある程度合理性のある取引慣行であり、これまでは大きな問題になっていなかったというのが実際のところであろう。

 ただ、今後は様々な立場の人を不動産売買に呼び込み、遠隔地や外国からの投資も含めて、市場を活性化させていく必要がある。そういった見地に立った場合、対面と紙を基本とした現行の取引慣行は大きな障害となる可能性が高い。
 米国の場合には、電子サインが比較的普及しているだけでなく、紙ベースではあるものの、サインしたのちPDFにして送付し、双方が確認した上で、原本を送るという、現実的取引も多く行われている。

 日本ではすぐ形式論となり、対面か非対面かという極端な話になりがちである。だが不動産の取引は、物件や地域、売買当事者の属性などによって様々なケースが存在する。現実に普及しているITツールをベースに、どれだけ合理的でシンプルに取引を進めることができるのかという視点での議論が重要である。

 - 経済, IT・科学 , ,

  関連記事

Conde Nast Building
ニューヨークの景観論争で浮き彫りになった?日本の規制の実態

 ニューヨークの超高層ビルの看板をめぐってちょっとした論争が起こっている。場所は …

chintaiapart
民法改正で不動産賃貸業は本格的なサービス産業に脱皮できるか?

 法務大臣の諮問機関である法制審議会は2014年8月26日、民法における債権関係 …

gpifpotofori2015
株式市場で圧倒的な存在感を示す公的年金。まだまだ買い余力はあるが・・・

 株式市場における公的年金の存在感が大きくなっている。債券から株式へのポートフォ …

costabranka
キプロスの金融危機があぶりだす、欧州の裏資金ルートの実態

 キプロスが、ユーロ圏からの金融支援と引き換えに、銀行の大口預金をカットするなど …

intelbaytrail
インテル1~3月期決算。データセンター好調も、IoTはまだまだ途上

 半導体世界最大手の米インテルは2015年4月14日、2015年1~3月期の決算 …

gunosi
ニュース・キュレーションのグノシーが上場。広告媒体として機能することが明らかに

 スマホ向けにニュース・キュレーション・サービスを提供するグノシー(Gunosy …

nichigin04
日銀のマイナス金利。とりあえず時間稼ぎが出来たという点で成功か

 日銀は、2016年1月28日・29日に開催した金融政策決定会合において、金融機 …

doller02
欧州の地下経済比率は平均18.5%。日本は比較的良好といわれるが実態は?

 VISAヨーロッパは5月7日、欧州の地下経済の規模は2兆1000億ユーロ(約2 …

irisoyama
TPPを見据えアイリスオーヤマが農業ビジネスに本格参入。流通改革の手本となるか?

 農業分野においてTPP(環太平洋パートナーシップ協定)締結後を見据えた動きが活 …

thanksgiving01
七面鳥そっちのけ。感謝祭セールに殺到する米国人が支える底堅い個人消費

 米国は現在、感謝祭休日の真っ最中。日本のお盆や正月と同様、実家に帰って家族と過 …