ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

円安をめぐって日銀と政府・財界に温度差。追加緩和か物価目標修正か?

 

 急激に進む円安をめぐって、日銀と政府・財界に温度差が出てきている。今後の金融政策や景気対策について微妙な影響を及ぼす可能性もある。

 nichigin02 日銀の黒田総裁は、2014年10月7日に開催された金融政策決定会合後の記者会見において、円安が進むことは「日本経済にとってプラス」との見解を示した。黒田氏はこのところ円安を容認する発言を繰り返しており、今回の発言もその延長線上にある。その意味では特に驚きのある内容ではない。

 日銀は2年で2%という物価目標を掲げているが、現状の物価は厳しい状況にある。消費者物価指数はこのところ連続して伸び率が低下しており、物価上昇の鈍化が鮮明になってきている。
 最新の8月の数字では、代表的な指数である「生鮮食料品を除く総合(コア指数)」が前年同月比3.1%の上昇にとどまった。5月が3.4%、6月が3.3%、7月が3.3%なので伸び率は着実に低下している。日銀では消費税による物価上昇を2%程度と見ているので、消費税の影響を除いた物価上昇率は1.1%ということになる。
 最終的な物価目標はコア指数ではなく総合指数になると考えられるが、両者にあまり違いはなく、このままでは物価目標の達成は難しいと判断するのが妥当だろう。

 これまでの物価上昇は景気の回復というよりも輸入物価上昇の影響が大きかったことから、今後、さらに円安が進めば、もう一段の物価上昇が期待できる。黒田氏が円安を望むのは輸入物価主導でインフレが進展することを期待しているからである。

 だが円安に対する社会の認識は着実に変わりつつある。デフレの進行中は、円高が諸悪の根源とされ、円高さえ解消されれば日本経済は劇的に回復するという、安易な論調が支配していた。実際に円高が解消されてしまうと、当然のことながら、そうではなかったことが明らかになってきている。

 経団連の榊原定征会長は9月末の記者会見において「これ以上の円安は日本全体にとってマイナスの影響が大きくい」と懸念を示している。経団連は2年前までは、盛んに円高是正を訴えていた。会長が変わったとはいえ、論理的整合性のなさは拭いようがないが、これが現在の財界のホンネということである。政府内部でも、円安対策を求める声が一部から上がってくることになるだろう。

 そうなってくると、金融政策との整合性が問題になってくる。安倍政権発足当初は、円高是正とデフレ脱却で日銀と政府の利害は一致していたが、甘い新婚生活はそろそろ終わりつつある。
 物価目標の時期を後にシフトするのか、追加の量的緩和策に踏み切るのか、近い将来、日銀は決断を迫られることになるだろう。

 - 政治, 経済 , , , , ,

  関連記事

businessman02
非正規社員の数が過去最多。このほかにも実質賃下げを示唆する出来事が増加中

 総務省は8月13日、4~6月期の労働力調査の結果を発表した。それによると、非正 …

no image
米著名ヘッジファンドが苦境に

 米国の著名な投資家であるジョン・ポールソン氏が率いるヘッジファンドが苦境に立た …

tosho05
日本の株式市場が賭博場になったのは、企業のダブルスタンダードが原因?

 持続的な成長を実現するために、企業と投資家の間にどのような関係が必要なのかにつ …

kamotsusen
FTA締結のメリットをまったく享受できない韓国。日本はTPPの影響をどう考えるべきか?

 各国と相次いでFTA(自由貿易協定)を締結してきた韓国において、消費者がその恩 …

setsubitoshi
設備投資に回復の兆し。1~3月期GDPの改定値は上方修正の可能性

 企業の設備投資に回復の兆しが見られるようになってきた。財務省が発表した2015 …

hakukirai02
薄熙来被告の初公判が始まる。公判では検察と全面対決の様相だが・・・・

 中国共産党の最高指導部入りが確実視されながら権力闘争で失脚し、収賄や横領の罪に …

jutakugai
再来年に迫った相続税増税で住宅保有者は大慌て。だが今後も資産課税強化は続く

 2015年1月に迫った相続税の増税が住宅保有層における懸案事項になってきている …

meti03
官製ベンチャーキャピタルの産業革新機構は、まるで公共工事のゼネコン

 産業革新機構は2014年1月8日、日米両国のベンチャー企業育成を手がける株式会 …

girishagikai
ギリシャが事実上、旧通貨発行と同じ効果を持つ約束手形の発行に追い込まれる?

 ドイツのショイブレ財務相は、欧州メディアのインタビュー記事において、ギリシャが …

buffett
著名投資家バフェット氏の書簡から読み解く、彼の自信とその限界

 米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏が2012年12月期の最終決算について …