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産業(革新)ではなく産業(衰退)機構?ルネサス再建案はトヨタとパナの下請け会社化

 

 経営再建中の半導体大手ルネサスエレクトロニクスに対する産業革新機構の経営再建案がほぼまとまった。
 産業革新機構など複数社によるルネサスへの出資総額は2000億円。第三者割当増資を実施して資金を提供する。2000億円のうち、産業革新機構の出資分は1900億円、残りはトヨタ自動車やパナソニック、キヤノンなどのルネサスの顧客企業が負担する。

 ルネサスの赤尾社長は責任を取って退任し、産業革新機構が経営者を選定して、ルネサスに送り込む。金融機関に対しては金利の減免を求めるが、債券の減額については今のところ想定されていない模様。

 ルネサス側は現在実施している人員削減に加えて、あたらに数千人規模の人員削減を実施しなければならない。このうち1000人程度について、ルネサスの設立母体である、日立製作所、三菱電機、NECに対して受け入れを要請しているが、NEC側は拒否している。他の2社は検討中。

 大方の予想通り、米国のファンドではなく、産業革新機構がトヨタ、パナソニックなど顧客企業の要望を受けて出資を行うスキームとなった。
 ルネサスが経営危機に陥った最大の原因は、当事者能力のない現経営陣の甘い経営姿勢であることは間違いないが、経営戦略上も大きなミスを犯している。
 トヨタやパナソニックなど「営業しやすい」相手にばかり集中し、結果として大幅な値引きを要求され利益を縮小させてしまったのである。海外顧客をもっと積極的に開拓し、キメ細かいセールスを行えば「現状よりもはるかに高い利益率を確保できる」(半導体アナリスト)といわれる。
 海外顧客と厳しい交渉をするよりは、トヨタやパナソニックの下請けになり、言われるがままの値段で販売するという安易な道を選んだ結果の経営危機であった。

 だが今回、産業革新機構がトヨタやパナソニックの意向を受けて出資に踏み切ったことで、ルネサスの下請け的甘え体質がそのまま温存されることとなった。
 トヨタやパナソニックは、出資直後は世間の批判を気にして、厳しい値引き要求を控える可能性が高いが、しばらくすれば、これまでと同様、露骨な値引き要求を繰り返すことは目に見えている。結局ルネサスの経営は抜本的には改善しない可能性が高い。

 今回のスキームは、実質的に産業革新機能という税金を用いた、トヨタとパナソニックに対する補助金と考えた方がよいだろう。つまり両社は国からの補助金がないと、現状の利益を維持できないのである。いわば見せかけの利益といってよい。
 今回の産業革新機能の出資を一番喜んでいるのは、会社に残ることを決めたルネサスの従業員とトヨタ、パナソニックの両社であろう。
 業界をよく知る関係者らからは「これでは産業革新機構ではなく、産業衰退機構だ」との笑えない冗談も聞こえてきている。

 - 経済

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