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MRJが初飛行に向け準備着々。ただ、日本の製造業に利益をもたらすのかは別問題

 

 半世紀ぶりの国産旅客機として三菱重工が開発を進めるMRJ(三菱リージョナルジェット)の初飛行が近づいてきた。この機体には同社の社運がかかっているだけでなく、ものづくり日本の復活も期待されている。
 ただ、航空機産業はメガサプライヤーと呼ばれる部品メーカーによる寡占化が進んでおり、完成機メーカーがすべての主導権を握れるわけではない。MRJの成功によって、日本の製造業全体に恩恵があるのかは不透明だ。

 mrj 三菱重工は2014年10月18日、MRJの機体を初めて公開した。これまでは実機がなく、設計図だけでの営業活動だったが、現物の機体が完成したことで、販売にも弾みがつくことが期待されている。来年4月頃には初飛行を行う予定となっている。

 よく知られているように、日本は太平洋戦争の敗北によって、しばらくの間、航空機分野の研究・開発が禁止されていた。その後、政府主導で国産旅客機YS-11が開発され、約180機が生産された。だが、事業としてはまったくの赤字で、次の機体の開発につなげることはできなかった。三菱重工がMRJを成功させれば、戦後初めての快挙ということになる。

 ただ、YS-11が製造中止になって以後、世界の航空機産業はめざましい進歩を遂げている。航空機の中核部分をなすエンジンや制御系統、電装系統などは、欧米メーカーの独壇場となっている。MRJは、三菱重工が設計と組み立てを行っているという意味では日の丸ジェットということなるが、エンジンは米プラット・アンド・ホイットニー製を採用するなど、部品の7割が外国製となっている。

 航空機は安全性の認証などに膨大な手続きとデータ提出が必要となり、仮に技術的に十分な水準の部品を製造することができたとしても、新規参入ではコストが合わないケースが多い。ボーイングやエアバスなど完成機メーカーは、メガサプライヤーと呼ばれる部品メーカーに工程のかなりの部分を任せ、自身は最終組み立てに特化するというのが最近の傾向である。
 MRJが順調に生産を拡大した場合でも、コストを考えるとメガサプライヤーの部品を使用せざるを得ず、他の日本企業への波及効果は限定的になってしまう可能性が高い。

  ただ、航空機の分野は、まだコモディティ化がそれほど進んでおらず、最終製品を組み立てる完成機メーカーは国際的に大きな影響力を持つ。少なくとも、最終製品をボーイングやエアバス、エンブラエルといった海外メーカーに独占されないという効果は大きい。

 また、MRJが業界2位のボンバルディア(カナダ)から一定のシェアを奪える可能性は高く、リージョナルジェット分野への参入には、それなりの意味があるだろう。ただ、MRJの成功によって、日本の航空機産業の裾野が広がるのかどうかは、また別の問題である。

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