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文科省の有識者委員会で飛び出したG大学とL大学って何だ?

 

 L大学とG大学というキーワードが教育関係者の間でちょっとした話題になっている。文部科学省が主宰する大学における職業訓練に関する有識者会議において、アカデミックな教育を行う大学と、職業訓練に専念する大学に区分しようという大胆な案が委員から提出されたからだ。

 toyamaceo 案を提示したのは、経営競争基盤CEOの冨山和彦氏。冨山氏は経営コンサルタントで、政府主導で設立された企業再生ファンド企業・産業再生機構のCOOを務めた人物として有名である。
 文科省では、実践的な職業訓練を行う高等教育機関の制度化を検討しており、有識者を集めて議論を行っている。会議参加者の多くがアカデミズムの人たちなので、冨山氏の経歴は異色である。また同氏は、かねてから歯に衣着せぬ発言で有名で、今回も期待を裏切らず刺激的な提案を行ったというわけである。

 提案では、日本はグローバルに戦うごく一部の人材と地域密着型の仕事 に従事する多数の人材に二極分化しているとし、前者をグローバル型(G型)、後者をローカル型(L型)と定義している。現在、低い水準にとどまっているL型の労働生産性を上げないと、経済全体の底上げや賃金上昇は難しいと主張。これを実現するため、一部の大学を除き、カリキュラムを職業訓練的なものに切り替えるべきと主張している。

 文科省では、世界で戦える人材育成を念頭に、スーパーグローバル大学という制度の導入を開始しており、トップ型に選抜された大学には重点的に予算配分する方針を打ち出している。トップ型大学に選ばれているのは、東京大学、京都大学、大阪大学、東北大学など旧帝国大学を中心とした国立大学と、早稲田、慶応といった私立の有名校となっている。

 具体的にどの大学をG大学にするのかについて議論されているわけではないが、分かりやすく言ってしまえば、旧帝大と早慶以外は、職業訓練校にしようという考え方である。
 職業訓練校における経済学部・経営学部では、経営学や経済学の難しい理論ではなく弥生会計の使い方を、工学部では流体力学ではなく、最新鋭の工作機械の使い方を教えべきとしている。

 この提案に対しては、当然のことながらアカデミズムの世界を中心に反対の声が上がっている。もしこの案が実現した場合、職業訓練校となった大学の教員は、研究者というよりも、教師としての能力が問われることになり、学者としての立場は薄くなるからだ。

 またネットなどにおいても賛否両論が戦わされているようである。冨山氏による日本経済の現状分析や必要な対策というのはまさに正論といってよいものだが、現実にこうした制度を導入するとなると様々な問題を引き起こすだろう。

 日本は労働市場において適切な競争環境が維持されているとはいえず、大学の教育内容を分けてしまうと、その段階で、身分制度のように人材を分断し、流動性が低下してしまう可能性が高い。
 スイスは大学進学率が極端に低く、職業訓練学校が広く普及していることで知られている。だが、企業内の人材登用に競争原理が働いており、大手企業のCEOが職業訓練学校出身というケースは珍しくない。このため、こうした制度が階層の固定化にはつながっていないが、日本でこうした結果を望むのはほぼ不可能だろう。

 ただ、現実問題として、日本人全体としては、米国やドイツのように高付加価値産業でグローバルに戦うという道は選択しなかったと解釈することができる。そうであれば、こうした地域密着型の職業訓練校への移行は、何らかの形で実践する必要があるだろう。

 - 政治, 社会 ,

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