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日銀サプライズ追加緩和。長期金利を意識したものだった可能性も

 

 日銀は10月31日の金融政策決定会合において、追加の量的緩和策を決定した。追加緩和の実施そのものはある程度予想されていたものの、この時期での決定を予想していた市場関係者は少なく、市場にとってはサプライズとなった。当日の日経平均株価は一時800円以上も上昇した。

kuroda02 今回のタイミングでの追加緩和となった背景は、額面通りに受け止めれば、やはり物価の上昇スピードが鈍化してきたことだろう。
 同じ日の午前、9月の消費者物価指数が発表となったが、代表的な指数である「生鮮食料品を除く総合(コア指数)」は前年同月比3.0%の上昇にとどまった、日銀では消費税による物価上昇を2%程度と見ているので、消費税の影響を除いた物価上昇率は1.0%ということになる。このままでは1%を切る可能性も高くなってきており、物価目標の達成は相当困難な状況になりつつある。

 一方、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は10月29日、量的緩和策を終了することを正式に決定している。米国の量的緩和終了と日銀の追加緩和決定がほぼ同じタイミングになったことから、円安ドル高の進行が予想される。実際、ドルは急騰し、11月4日の段階で一時114円を付ける状況となった。もう一段の円安となれば、輸入物価がさらに上昇し、全体の物価も上がってくるだろう。

 ただ、このタイミングでの緩和となった理由はそれだけではない可能性もある。結果的にそうなってしまったのかもしれないが、奇しくも同じ日にGPIF(年金積立金管理運用 独立行政法人)の運用方針変更が発表になったからである。新しい運用方針では従来60%を占めていた国債を35%に、逆に12%だった株式を25%まで増やすとしている。
 実際には、すでに株式へのシフトが進んでおり、今年6月末時点において国債は54%、株式は17%になっている。GPIFの改革は株式市場では買い材料として話題になっているが、債券市場での売り材料でもある。

 現在、公的年金は130兆円の資金を運用している。国債が54%から35%に減るということになると、約25兆円の国債が売られる計算になる。今回の追加緩和策では、1年あたり60兆~70兆円のペースで増やすとしていたマネタリーベースを約80兆円まで拡大するとしており、10兆円から20兆円の国債を買い増すことになる。さらに、平均残存期間の延長も発表しており、主に長期債を購入することが明らかになっている。

 つまり、GPIFが売りに出す長期国債は、実質的に日銀が購入する形となる。現在、国債は短期債への借り換えが進んでおり、長期債を保有したがる投資家はあまりいない。結果的に、多くの人が保有したがらない長期債をすべて日銀が買い取るわけだ。量的緩和について批判的な人からみれば、これは財政ファイナンスと映るかもしれない。

 量的緩和策が財政ファイナンスなのかは、様々な議論があるだろう。また、今回の追加緩和のタイミングが、国債市場と関連しているのか検証のしようもない。だが、実は国債の入札市場の状況が芳しくなく、今回のタイミングが、金利の急騰を意識したものなのだったとしたら、あまりよい兆候とはいえない。

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