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米中間選挙で注目を集めた格差問題。だが日本の方が状況はより深刻かもしれない

 

 米国の中間選挙で民主党が敗北したことで、あらためて米国の格差問題がクローズアップされている。日本でも経済的な格差の問題が議論されているが、米国と日本ではだいぶ状況が異なっている。政策的な対応が難しいという意味では、日本の方がはるかに深刻かもしれない。

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 米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が行った調査では、アメリカの富の約半数を上位3%の世帯が独占しているという。リベラルなイメージが強かったオバマ大統領にはこうした格差解消が求められていたが、なかなかこれを実現することはできなかった。今回の中間選挙の敗北はこうしたオバマ大統領への失望が背景にあると考えられる。

 日本の報道は、基本的に米国内の論調をそのまま踏襲するので、米国は大変な格差社会であるというトーンが主流である。だが現実には、日本の格差は実は米国並みであり、格差問題は日米共通の課題である。

 確かに日本では、資産何兆円という大富豪はほとんどいないが、米国の格差はこうした突出した大富豪の存在で平均値が引き上げられている側面が強い。資産数千万以上を保有する世帯の割合や相対的貧困率といったデータを用いた場合、日本と米国にはそれほどの違いはないのが実情だ。

 つまり、突出した富豪がいないという点を除けば、日本と米国はかなり似たような状況にあると考えてよく、少なくとも欧州と比較すれば、日本と米国は超格差社会といえる。
 一部には相対的貧困率のデータは無意味という見解があるがそれは正しくない。生活保護を基準にした絶対的貧困でも日本の貧困率はやはり高い。また米国は低福祉といわれているが、これも欧州を基準にした議論であり、日本を比較対象とした場合、米国の低所得者向け福祉は日本と同程度か、むしろ手厚い面すらある。

 問題はこうした格差をどのようにして是正するのかという点だが、米国は比較的簡単に解決できる。オバマ大統領はブッシュ政権が導入した富裕層向けの減税の打ち切りを主張してきたが、共和党の抵抗でなかなか実現できなかった。つまり、米国の格差は富裕層への優遇から来ている面が強く、政治的に決断さえできれば、富裕層から低所得層への所得移転は実現可能な状態にある。

 これに対しては日本はまったくの正反対である。よく知られているように、日本は累進課税制度を導入しており、すでに富裕層から多額の税金を徴収している。
 年収2000万円の人は、状況によって異なるものの、おおよそ十数%の所得税がかかっているが、年収300万円の人は2%程度しか課税されていない。年収600万円でも状況は大きく変わっておらず、日本では中間層以下は実質的に所得税が無税の状態にあるといってよい。
 一方、源泉徴収の対象となる給与所得者のうち年収が1000万円を超える人は全体のわずか約4%だが、その人達が支払う所得税は全体の50%近くを占めている。つまり、全体の4%に過ぎない高額所得者が、全体の半分の税金を支払っている計算となる。

 中間層以下は実質的に無税とし、累進課税による所得の強制配分を行っても、貧困率は米国と同水準なのである。この現実はかなり重い。日本ではこれ以上、富裕層から課税して再分配しても、貧困を解消することは難しいと考えるべきだろう。

 米国はお金はたくさんあるが、一部の超富裕層が独占している。一方日本は、そもそもお金がないので、富裕層から徴収しても低所得者層に十分に再配分できない状態が続いている。米国の格差解消は政治決断で解決できるが、日本は経済の構造そのものを変えるという大きな作業が必要となる。日本の格差問題は非常にやっかいである。

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