もはや紅白歌合戦?戦争の遺物となった研究所同士が争うスパコン計算速度
世界のスーパーコンピューター性能ランキングが発表され、前回2位だった理化学研究所の「京 (けい)」は3位に転落した。1番でなければ意味がないと主張し、総額1000億円以上の税金を使っておきながら、1位どころが3位に転落というまったくお話にならない状況となっている。
だがスパコンが抱える問題は3位に転落したことではない。スパコンの計算速度などというもの自体がすでに「時代遅れ」になっているという事実が見逃されているところにある(たぶん蓮舫議員はそのことを知らずに発言したと思われるが・・・)。
ここ20年のコンピュータ技術の発展は目覚しく、コンピュータの単純な演算速度を競う時代はとっくに過ぎ去っている。現在では安価なリソースで分散処理をどれだけ効率よく行うことができるのかに技術的な焦点が移っており、スパコンの速度を競うのはもはや「途上国的」な発想である。いってみれば「いまだに紅白出場歌手で一喜一憂するようなもの」(IT技術者)だ。
このことは、「京」のライバルとなっているスパコンがどこで作られているのかを見ればより一層明らかとなる。
今回のランキングで1位となったスパコンは米オークリッジ国立研究所の「タイタン」、2位は前回1位だった米ローレンス・リバモア国立研究所の「セコイア」である。
両研究所とも、米国の核兵器開発プロジェクトである「マンハッタン計画」のために作られたもの。当時は国家の行く末をかけた研究プロジェクトで湯水のように研究費が使えたが、核兵器が当たり前の存在となった今では、予算の確保に必死となっている。なにしろ、今ではちょっとしたパソコンがあれば核兵器など設計できてしまう(事実北朝鮮でも核兵器を作れるのだから・・・)時代なのだ。
肥大化した組織を維持するには「お金のかかる」研究がどうしても必要だ。核兵器に代わる「金のなる木」として白羽の矢を立てたのがスパコンというわけである。両研究所とも米国の科学技術を支えた名門ではあるが、すでに過去の遺物となりつつある。
ちなみに「京」を開発している理化学研究所も、太平洋戦争当時、日本独自の原子爆弾を開発するため軍部と一体になって発展してきた研究所である。
要するに「京」が競争しているのは、爆弾製造人同士の狭い内輪の世界であり、もはや国家の科学技術を賭けた争いなどではないのだ。最先端の科学技術は、別の場所で今日も毎日生まれ続けている。
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