盛り上がる解散の「大義」に関する論争。結論は選挙の結果次第?
衆議院を解散する「大義」に関する議論が活発になっている。野党側が「アベノミクスの失敗を覆い隠す大義なき解散」と反発しているほか、メディアでも同様の論調が一部に見られる。一方で、首相の専権事項ともいわれる解散に、そもそも大義が必要なのかという見解もある。
11月21日の解散を受けて民主党の海江田代表は、「国民の信を問う大義名分がない」と述べ、解散の決断について批判した。また与党内でも、小泉進次郎議員のように「解散の大義が感じられない国民が多いのではないか」と述べ、万歳三唱をしなかった人もいる。
安倍政権側は当然のことながら「国民に信を問う」重要な決断だとしており、解散の意義を強調している。一方、解散権は首相だけに与えられた専権事項であり、周囲がとやかくいうものではないとの見方もある。
首相の解散権については、憲法に明示的に記されているわけではない。憲法第7条の国事行為に基づく解散については、内閣の助言と承認に基づいて実施されることになるので、一般的には内閣に解散権があると解釈されている。首相には罷免権があるため、実質的に解散権は首相の専権事項と理解されることになる。
これとは異なる学説も存在しているのだが、1952年の吉田内閣における、いわゆる「抜き打ち解散」以後、7条解散は実質的に機能してきており、実務上、首相の専権事項と解釈するのが妥当だろう。
今回、安倍首相が解散を決断したのは、来年の統一地方選、消費税の増税(延期を決断)、9月の総裁選、さらには再来年の参院選という政治日程を考慮に入れた上で、今、解散するのがもっとも政権維持にとって得策という判断をしたからにほかならない。
その意味では、まぎれもなく党利党略の解散ということになるが、そもそも政治とは権力闘争の場であり、政党政治である以上、党利党略と無縁であることは難しいだろう。
日本が議会制民主主義の国であることを考えれば、この解散に大義があるのかないのかについては、やはり選挙の結果で判断するしかなさそうである。
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