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政労使会議で来春の賃上げを明記。だが他の要請事項は相互に矛盾している

 

 政府は2014年12月16日、政府、経済団体、労働団体の代表らが、雇用や賃金について話し合う政労使会議を開催した。会議では合意文書がまとめられ、「経済界は、賃金の引き上げに向けた最大限の努力を図る」と明記された。来年の春闘における賃上げは確実となったが、他の要請事項との兼ね合いから、賃上げ幅がどの程度になるのかは不透明な状況だ。

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 政労使会議は、昨年度は5回開催され、今年度と同様、ベースアップの実施など、賃上げと雇用拡大に関する合意文書が作成された。今年の春闘では、久々に賃上げが実施されたが、その直接的なきっかけとなったのがこの政労使会議である。
 本来、従業員の待遇は労使間の交渉で決定すべきものだが、日本の企業や労働組合は機能不全を起こしており、政府が介入しないと、意思決定できない状態となっている。現在の日本では、政労使会議が実質的な労使交渉の場となっている。

 安倍政権の最大の課題は、物価の上昇ペースに賃金が追い付いていない状況を改善することである。今回の政労使会議において賃上げが明記されることはほぼ確実だったが、問題は賃上げの幅である。衆院選で勝利したこともあり、政権側は財界に対して、大幅な賃金上昇を求めることになるだろう。
 政府による事実上の強制とはいえ、賃金が大幅に上昇すれば、個人消費の拡大と物価上昇が進む可能性が高い。2年で2%という目標達成は難しいものの、目標値には一歩近づくことになる。

 だが政労使会議では、中小企業対策という観点から、下請け企業に対する価格配慮も求めている。また、政労使会議とは別に、公的年金改革を通じて企業に対してROE(自己資本利益率)の向上や配当の強化についても政府は強く要請している。
 ROEを向上させるためには、利益率を高くする必要があるが、これは、下請けへの価格配慮と賃上要請とは完全に矛盾する。配当強化も同様である。

 つまり政府は企業に対して、複数の矛盾する要請を行っていることになり、企業側は結果として、もっともラクな部分を犠牲にする可能性が高い。

 賃上げを実施しない場合、政府や世論から批判されることになるので、これを選択する可能性は低い。だが現状では賃上げ幅をなるだけ低く抑えようという意向が働いてしまうだろう。ROEの向上策については、これを実施しない場合、公的年金による投資対象からはずされる可能性があるので、保身を考える経営者としては選択しにくいはずだ。
 最終的には下請けへの価格配慮が犠牲になる可能性が高いと考えられる。また正社員の採用抑制と非正規社員の増加という形で調整する可能性もある。

 相互に矛盾する政策はどこかに綻びが出てしまうことになる。賃上げ、下請け配慮、公的年金という3つのファクターにおける一種のババ抜きゲームである。

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