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今年も賃上げは確実だが、企業があまり積極的になっていない理由

 

 安倍政権が賃上げに向けて本格的に動き出している。昨年度に引き続き、財界に対して異例の賃上げ要請を行うとともに、税制改正大綱には賃上げ促進税制を盛り込んだ。財界は基本的に賃上げに応じる方針だが、日本経済を取り巻く環境を総合的に考えると、大幅な賃上げは難しいだろう。

 kyuryo 政府は2014年12月16日、政府、経済団体、労働団体の代表らが、雇用や賃金について話し合う政労使会議を開催した。会議では、一昨年と同様、合意文書がまとめられ、2015年4月の春闘において賃上げを行うことが明記された。昨年の春闘では、この政労使会議の合意がきっかけとなり、賃上げが実施された。今年も同様に財界は一定の賃上げを容認することになるだろう。
 安倍首相は、第3次安倍内閣が発足した翌日、早速、経団連の会合に出席し、財界に対してあらためて賃上げを要請した。賃上げ受け入れ後というタイミングを考えると、より高い賃上げ率を求めたものと解釈されている。

 税制でも側面支援している。12月30日にとりまとめた税制改正大綱では、賃上げを行った企業の法人税を軽減する「賃上げ促進税制」の緩和が盛り込まれた。
 賃上げ促進税制は、企業が給与総額を一定割合増やした場合、増えた額の1割を法人税から差し引く仕組み。減税対象となる基準は、2014年度は2%の給与増加、2015年度は3%の給与増加、2016年度以降は5%の給与増加となっている。今回の大綱では、これを見直し、2016年度以降について、中小企業は3% 大企業は4%の給与増加で適用対象とする。

 ただ、企業としては、積極的に賃上げに応じる状況にはない。好調な米国経済や円安の影響によって製造業を中心に企業業績は好調だが、利益の多くは海外の現地生産によるものであり、国内が富の源泉にはなっていない。企業としては、儲けに関係ない地域の社員よりも、儲けが出ている地域の社員を優先することになるため、いくら業績が良くても、国内社員に対する大幅な賃上げにはつながらない。

 また、賃上げが税制面で促進されたとしても、経営者がそれによって賃上げを決断する可能性は低い。税金はあくまで賃金などコストを支払った後の利益に課税されるものであり、企業にとって経費ではない。いくら減税されたとしても、賃上げをしてしまえば、減益になってしまうため、基本的に経営者は賃上げを望まない。

 結局のところ、政府からの強い要請でやむなく賃上げを行うというところが多く、賃上げ幅はあまり期待できないだろう。ただ、半ば強制であったとしても、賃上げが実施されれば、個人消費にはプラスとなる可能性が高い。急激なインフレを懸念する状況ではないことを考えると、短期な効果はあるだろう。
 最終的には企業業績との兼ね合いが分かれ目となる。賃上げによって増益に歯止めがかかるとの印象が市場に出てきた場合には、企業は業績を優先する可能性が高い。

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