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経団連が8年ぶりに総合的な政策提言書を作成。かくしてその中身は?

 

 経団連は2015年1月1日、2030年までの国家ビジョンを示す政策提言「『豊かで活力ある日本』の再生」を発表した。経団連が総合的な政策提言を行うのは、御手洗会長時代以来、8年ぶりとなる。

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 経団連と安倍政権はしばらくの間、冷え切った関係が続いてきた。前会長である米倉弘昌氏が安倍政権の経済政策を厳しく批判し、これに立腹した安倍首相が経団連を徹底的に冷遇してきたからである。経団連側はこの状況を憂慮し、安倍首相と個人的に近いといわれる榊原定征氏を会長に選出。関係修復を図ってきたという経緯がある。

 榊原体制になり経団連は自民党への献金を再開。安倍政権からの賃上げ要請もすんなり受け入れるなど、恭順の姿勢を貫いている。今回の政策提言はこうした状況を色濃く反映したものとなった。

 財界による政策提言であるにもかかわらず、実現すべき目標として「若者が日本国民であることに誇りを持ち、チャレンジ精神を発揮し、希望ある未来を切り拓いていける国」と「世界から信頼され、尊敬される国」という2種類が掲げられている。
 その上で、名目で3%、実質で2%程度の持続的成長を実現させ、2030年時点において名目GDPを833兆円(現在の1.5倍)に、国民1人当たりのGDPを700万円(現在の1.8倍)に拡大するとしている。経団連という名称を除くと、安倍政権が示すビジョンとほとんど同じである。

 ただ、これらを実現するための具体的な施策は乏しい。少子化対策の強化で人口1億人維持を目指す、女性の活用を促進するなど、これまでもアベノミクスの中で目にした項目が並んでいる。経団連らしい内容ということになると、法人税改革や外国人材の活用といったところくらいだ。

 提言の中心になっていると思われる法人減税についても、法人減税がイコールフィッティングという文脈で使われている点も非常に気になる。

 諸外国と比較すると日本の法人税は高いというロジックと考えられるが、あくまでそれはシンガポールや英国など、特別に税金が安い国との比較である。世界でもっとも経済活動が活発な米国の実効税率は日本よりもずっと高い。法人減税が2%の持続的な経済成長のドライブになるという根拠は乏しい。

 また、日本の法人税制は国内においてイコールフィッティングになっていない。これは以前から指摘されていることだが、日本の大企業には、租税特別措置という優遇税制が適用されており、現実の法人税率はもっと低い。本来は、法人税の減税と租税特別措置の廃止をセットで議論すべきだが、経団連はこれに消極的な姿勢を示している。
 このままでは、ベンチャー企業や外資系企業だけが高い税金を課せられるという状況が続き、本当の意味でのイコールフィッティングを実現することは難しい。

 アベノミクスを追認するだけとなってしまった今回の提言は、日本経済における主導権を失いつつある財界の現状を素直に反映したものと理解すべきなのかもしれない。

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