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麻生大臣による「守銭奴」発言。表現は下品だが、本質を突いている

 

 麻生財務大臣は2015年1月5日、日本企業が内部留保を蓄積していることについて「まだカネをためたいなんて、ただの守銭奴にすぎない」と発言した。いつもの放言ではあるのだが、今回の放言はかなり本質を突いている。

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 この発言が飛び出したのは、信託協会の賀詞交換会での挨拶。日本企業が内部留保を330兆円近くまで貯め込んでいることについて批判し、設備投資などに資金を回すべきだとの見解を示した。
 守銭奴という言葉のニュアンスが良くなかったせいか、6日の記者会見では「個別企業について言及したものではない」との釈明を行った。

 守銭奴という言い回しはともかく、日本企業が空前の内部留保を蓄積しているのは事実である。9月末時点における日本企業の内部留保は324兆円に達している。20年前の1994年には140兆円程度しかなく、デフレ下で内部留保を2倍に膨れあがらせていたことになる。
 内部留保はあくまで決算書上の数値に過ぎず、これが収益資産などに変わっていれば何の問題もない。しかし、日本企業の内部留保のうち、じつに半分が現預金となっている。つまり日本企業は160兆円もの現金を何もしないまま、ただ銀行に預けているのだ。

 企業側の言い分としては、日本経済の見通しが暗く、人口も減る中、積極的に設備投資をする先がないという理屈になるわけだが、こうした状況を打開するための方策が、日銀の量的緩和策だったはずである。日銀が大量にマネーを供給することで、期待インフレを醸成させ、実質金利をマイナスにして企業の設備投資を促そうという目論見である。
 つまり現金を持っていると損をするような仕組みを作るということなのだが、今のところ企業は全く反応しておらず、現預金は増える一方となっている。

 麻生氏の発言の背景には、量的緩和策を実施しているにもかかわらず、企業が想定通りの行動を取らないことに対する苛立ちがあると考えられる。

 日本企業の行動が鈍いのは、業績向上に対する株主からの圧力が乏しいことが大きく影響している。日本国内に目立った投資先がなければ、工夫して新しい事業を創造するか、海外へ投資するというのが一般的なセオリーであり、多くの株主はそれを求めているはずだ。
 だが日本の場合、会社は従業員や経営者のものという意識が強く、株主が経営に関与することは批判を浴びることもある。このため日本の投資家の多くは経営に対して口を挟まない。経営者も従業員からの昇格が多く、株主から経営を委託されたという感覚は乏しい。

 日本企業の経営者は株主からの突き上げがないため、リスクを取って業績を上げる必要がない。思い切ったことをせず、経営者としての任期をまっとうした方が有利であり、結果として現金の貯め込みが続くことになる。変化がないことは現状の立場を維持したい多くの従業員にとって悪い話ではないため、これを改革しようというインセンティブは生じない。

 本来、構造改革とはこうした状況を打開することを意味していた。しかし、現在の日本では、過度な競争を強いる政策というニュアンスにすり替わっており、説得力を持っていない。こうした社会の風潮が大きく変わる兆候は今のところないため、大企業を中心に現金の蓄積がさらに進む可能性が高い。

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