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インフレが予想されるのに、タンス預金増加の兆候。背景には何が?

 

 日銀の量的緩和策によってインフレ期待が徐々に高まりつつあるが、一方で、デフレの象徴でもあるタンス預金が増加する兆候が見られる。多くの人にデフレマインドが残っていることが主な原因と考えられるが、高齢化の進展も影響を与えている可能性がある。

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 世の中に出回っている現金(日銀券と硬貨)の残高は約92兆円である。マネーストック(M3)はざっと1200兆円あるので、約8%が現金ということになる。現金に対するニーズは常に一定数存在するため、経済規模が拡大すれば現金の量も増えてくることになる。

 日本は先進国の中でも、特に現金に対するニーズが強いことで知られている。GDPに対する現金の割合はドルやユーロの2倍の水準に達する。
 しかもドルやユーロの場合、現金で保有している人の多くは、海外在住者やアングラ・ビジネスの関係者であり、一般的な国民が現金を持つ割合はさらに低い。日本円はあまり国際化していないことを考えると、、日本の現金流通の水準は国際的に見て突出して高いということになる。

 しかし、ここ10年の日本経済は横ばいが続いており、現金に対する潜在的ニーズは増えていない。実際、しばらくの間、現金の流通量も横ばいの数字を示していた。だが最近、現金の流通量が再び増加に転じており、現金の伸びがマネーストックの伸びを上回っている。

 日銀による量的緩和でマネタリーベースは増加しているものの、マネーストックがそれに合わせて顕著に増加するという状況にはなっていない。また、量的緩和策は企業への波及が先行すると考えられるので、個人が主体となる現金保有が量的緩和策で増加したとは考えにくい。
 日本におけるクレジットカードの年間決済額は約50兆円とGDPの1割を占めているが、この数字は10年間で2倍以上に拡大している。最近では電子マネーによる決済が加わるので、現金へのニーズはさらに低下している。

 それにも関わらず現金が増えているというのは、個人のタンス預金が増加していることが主な原因と考えられる。タンス預金の増加は、金利収入を捨ててまで手元に現金を置くという行動であり、不安心理の裏返しであることが多い。実際、日本がデフレに突入した直後には、タンス預金が大幅に増加したといわれる。

 量的緩和策が効果を発揮するならば、日本はインフレになるはずであり、基本的に現金保有は不利となる。しかし、現実には多くが国民がまだ現金に対する執着を持ち続けている。インフレになるかどうかということよりも、不安心理が大きいということなのかもしれない。

 どれほどの影響を与えているのか定かではないが、高齢化もひとつの要因になっている可能性がある。人は高齢になるほど行動が保守的になる。日本の金融資産の7割近くが60歳以上の高齢者によって占められていることを考えると、一部の裕福な高齢者がタンス預金を増やしている可能性は否定できない。

 アベノミクスに伴う円安や株高は、市場のインフレ期待を反映したものである。投資家や企業経営者のレベルでは、インフレ期待は徐々に高まっていると見てよいだろう。しかし、多くの国民にとって、インフレはまだ具体的にイメージできるものではないようだ。

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