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甘利経財相が原油安の効果は7兆円との見方。真偽の程は?

 

 甘利経済財政相は2015年1月9日、原油安が進んでいることに関して「日本経済には7兆円くらいのプラスになる」との見方を示した。原油価格の下落が世界経済に悪影響を及ぼすとの懸念が出ているが、政府としては、基本的にプラスの効果が高いと判断しているようだ。

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 甘利氏が述べているように、基本的に原油価格が下落することは、石油の消費国である先進各国にとってプラスの効果をもたらす。
 先進各国は1日あたり2500万バレルの石油を純消費している。原油価格はここ1年で100ドルから50ドル以下まで下落したが、もし50ドル前後の価格が今後も継続する場合、産油国から先進国に年間 50兆円以上の富が移転することになる。

 日本は1日あたり365万バレルの石油を輸入している。50ドルの水準が今後1年続いた場合、100ドルを基準にすると、輸入代金は8兆円ほど減少することになる。この数字は甘利氏の説明と近い数字なので、政府では原油価格下落による輸入金額の減少分が、ほぼそのまま経済効果になると判断しているようだ。

 政府は昨年末、消費増税による景気低迷をカバーするため、緊急経済対策として3.5兆円の予算を確保した。原油価格下落による経済効果は、今回の経済対策の2倍の水準である。これが毎年継続することを考えると、景気を押し上げる効果があることは間違いない。甘利氏の発言は額面通りに受け取って良いだろう。

 一部の市場関係者が懸念しているのは、ロシアやベネズエラなど、石油に依存した新興国の経済が立ち行かなくなることや、価格下落に耐えられなくなった一部のシェールガス事業者が破たんすることである。実際、テキサス州のシェールガス事業者が破たんしており、場合によっては市場の混乱も予想される。

 ただ世界経済全体として考えれば、一部産油国の財政難やシェールガス事業者の経営破たんは、大した問題ではない。多少の混乱はあるかもしれないが、先進国の消費拡大が原油安によるマイナス面を補うことになるだろう。
 日本経済についていえば、原油価格の下落でもっとも影響を受けるのは日銀かもしれない。量的緩和策における物価目標は、エネルギー価格を含んだものとなっており、原油価格の下落は、物価目標の実現を困難にする。

 エネルギー価格を含んだ消費者物価指数を目標値として使用することについては、以前から賛否両論があった。だが政府や日銀は、エネルギー価格が高騰していたことから、これを含んだ指数を用いた方が物価目標の実現が容易と考えた可能性が高い。しかし、原油価格が予想外に下落したことで、今度は逆に物価目標の実現が遠のいている。

 少なくとも今年の前半は、経済活性化による物価上昇よりも、価格下落の直接的な影響が大きく、場合によっては、物価はマイナスに転じるだろう。もし原油価格下落の恩恵を受けられるにしても、それは年後半となる可能性が高い。

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