進む不動産市場の二極分化。郊外は高級物件でも売りにくくなっている
不動産市場の二極分化が、ゆっくりとしたペースではあるが、着実に進行している。首都圏の中古マンション価格は上昇が続く一方、郊外の物件を中心に、売却が困難なケースも増加している。
東京カンテイが2014年12月に発表した最新の中古マンション価格は、首都圏で前月比1.2%増と3カ月連続で上昇した。近畿圏や中部圏でも上昇となったが、全体の相場が上昇しているのかというとそうでもない。首都圏の中でも上昇幅が大きいのは都心だけで、郊外の上昇幅は限定的だ。埼玉はマイナスとなっているほか、東京以外でも地域中心部の価格上昇が全体を引き上げている構図に変わりはない。
全体としてみれば、不動産価格の上昇は、アベノミクスのインフレ期待が引き越している可能性が高い。都心については、円安効果で外国人投資家が増えたことや、相続税が強化されることから、節税対策でタワーマンションの購入が増えていることも影響している。
だが、長期的には、人口の減少と都市部への人口移動が不動産価格の形成に大きな影響を与えている可能性が高い。郊外から地域拠点への転居が増えており、それにともなって不動産価格の二極分化が発生しているのだ。
実はこうした動きは10年ほど前から始まっており、中心地から遠い物件で価格破壊が起こっていることは多くの人が知るところとなっている。だが最近では、これまで高級住宅地と呼ばれていたエリアでも、市場の変化が顕著になっているという。
首都圏でも、世田谷や高輪といったエリアの高額物件が多数売りに出されるようになった。これまで、こうした郊外の高級戸建て物件が、大々的に売りに出されることはなかった。ネットでの仲介が増えたことで、目に触れやすくなったという面は否定できないが、背景には、こうした物件に対する根本的なニーズの低下があると考えられる。一方で都心部の高級タワーマンションは飛ぶように売れている。
東京郊外に住むある老夫婦は、自己居住していた戸建ての物件を売りに出した。子供はすでに独立し、夫が病院の世話になる頻度が高くなってきたことから、病院に近く、交通の便がよい都心に転居するつもりだという。不動産事業者が示した価格は購入価格を大幅に下回っているが、売却を優先したいので、やむを得ないという。こうした動きは、全国的に拡大している可能性が高く、各エリアの拠点都市への集中が進む。
拠点都市への流入は、人口の減少と高齢化が進む限り、避けて通ることはできない。一部にはこうした流れを押しとどめようという動きも見られるが、ほとんど効果はないだろう。人口の集約化が進むことを前提に、インフラの再整備や少子化対策を行わないと、本当の意味で諸問題の解決にはならない可能性が高い。
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